プレス金型部品
- 自動でプレス加工するときに材料を金型内に送り込む装置を「材料送り装置」と呼びます。その代表的なものがローラフィーダです。ローラフィーダは【図1】に示す構造をしています。固定された軸を中心に、送り長さ分の間欠回転をする送りローラと、材料を押さえながら挟み込む押さえローラの、二つのローラで構成されます。タグ:
- 材料内部にひずみのあるものをプレス加工すると、ひずみが大きくでてくることがあります。このような問題を解決するためにレベラーは使われます。その方法を示したものが【図1】です。材料に交互に変形を与えることで、材料内部のひずみが取り除かれます。この繰り返し掛ける変形もそのままにしますと、新たなひずみとして材料に残ってしまうので減衰して、ワークロールからでるときには平らな状態になるように調整します(プレス加工によって発生するひずみとのバランスを取るため、反らせておくこともあります)。タグ:
- アンコイラーから出てきた材料にはコイルの巻きぐせ等のひずみがあり、プレス加工に影響することがあります。このひずみ取りに使われる装置がレベラーです。 レベラーは【図1】に示すように、アンコイラと送り装置間に置かれます。【図1】に示すようなレベラーを独立型レベラーと呼びます。比較的材料板厚が薄いものに多く使われています。精密レベラーと呼ばれることもあります。 レベラーは【図2】に示すように、交互に配置されたロール(これをワークロールと呼びます)の間に材料を挟み、材料に上下方向に交互に変形を与えて材料のひずみを取ります。 ワークロールの中を材料が移動する必要がありますが、その方法の1つが【図2】に示されるピンチロールによって材料を引っ張る方法です。もう一つの方法は個々のワークロールが駆動され、材料矯正と材料移動の両方の働きを持たせたものです。タグ:
- 【図1】がS字ループの形です。ループをS字状にコントロールしたものです。ダウンループ、アップループ共に、ループ部分の材料重量がバックテンションの形で材料送りに影響します。この影響を少なくするために考えられたループ形状です。形状から厚板には適しません。 バックテンションや送り装置入り口での材料のバタツキを軽減することができるため、高速加工に適したループコントロールです。 S字ループでは材料の曲げ半径が大事になります。小さい方がコンパクトに装置をまとめることができますが、材料の折れ曲がりやガイド部分で材料がすれ、キズを発生させることがあります。そのため曲げ半径は大きく取りますが、目安としては板厚の400倍程度が最低値とされています。タグ:
- 【図1】がアップループの形です。ダウンループでのアンコイラと送り装置間の距離が長くなる欠点を、ループを上部空間に持って行くことで、距離の短縮をねらったものです。薄板材に使われることは少ないですが、材料の厚さが1mm程度以上の材料には多く使われています。 このアップループでは、バックテンションにより材料が引き戻されることはなく、逆に押す方向で力が作用します。送り装置のリリーシング動作と金型内のパイロットの関係がうまくいっていないと、送り長さが長くなる不具合が発生します。この現象を押さえるために、送り装置入り口にブレーキ等の工夫を凝らすことがありますが、このことが送り速度を早くすることの障害となり、高速プレス加工には適さないループコントロールです。タグ:
- 【図1】がダウンループの形です。ごく一般的な材料のたるみの取り方です。薄板材から厚板まで幅広く使われています。材料が自然に作るループに必要な距離(図中のL寸法)は、材料板厚の1600倍前後は必要とされています。その間で作られるたるみは床に着いてしまうことがあります。その対策として、ループが接地する部分の床を堀込むことも行われます。 このダウンループは、送り装置とアンコイラ(またはレベラー)で両端を支持されている間の材料のたるみ(ループ)です。ここで、送り装置がリリーシング等で材料押さえを開放すると、ループの重みで引き戻されます。これを「バックテンション」と呼びます。順送加工等では、パイロットへの負担が多くなってきたりします。タグ:
- コイル材を【図1】に示すような材料ストック部に置き、ピンチロールによって巻きほぐします。 材料ストック部は最大幅が入る構造となっています。この部分には材料幅にあわせて保持するガイドがあり、コイル幅の変動にあわせて対応できるようになっています。この部分にコイル材を入れるには、後ろから転がし入れるか、クレーンで吊り上げ入れるかのどちらかの方法が取られます。 落とし込まれたコイル材は下部にあるローラの上に乗ります。コイル材外周がこのローラ上を回転して、巻きほぐされます。 このようなことから、コイルクレードルでは、薄板材や材料表面傷を嫌うものには適用が難しいです。反面、厚板材や幅広コイル材等には使いやすい装置です。熱間圧延鋼板のような材料加工に適したものといえます。タグ:
- コイル材を【図1】に示すようにアンコイラのターンテーブル上に平置きして、コイルを巻きほぐす形式のアンコイラです。 材料メーカーから搬入されるコイル材の荷姿は、パレット上に数コイルを平置きした形です。【図1】では1つのコイル材をターンテーブルに乗せた状態を示していますが、材料メーカーから搬入されたパレットごと、ターンテーブル上に置くことができます。このようにできることで、アンコイラーへの材料セティングが楽になります。パレット上の一番上からコイル材を使うことで、コイル材の交換時間も短縮できることなどを目的として開発されたものです。 使用できる材料仕様は、板厚が1.2mm程度が最大で、薄い方では0.1mm程度です。材料幅は120mm程度まで、積載重量は3トン程度まで、多く使われているのは1トン前後のものが多いようです。タグ:
- 【図1】は、100kg程度までの軽量コイル材に使われることの多いアンコイラです。一般的にはリールスタンドと呼ばれています。薄板材の順送り加工では設備も安く、設置は置くだけでよいのでよく使われています。タグ:
- 【図1】は、コイル材を利用した自動化システムの構成を示しています。 構成としては、まずコイル材を保持して、巻きほぐす装置が必要です。これをアンコイラと呼びます。軽量なコイル材から1トンを越える重量級のものまであります。また、薄い材料、厚い材料もあります。その内容に合わせてアンコイラには、いくつかのタイプがあります。 アンコイラから巻きほぐされた材料は、たるんだ状態を作ります。このたるみをループと呼びます。 ループ部分の材料は送り装置によって金型内に送り込まれ、たるんだ状態から張った状態に変化します。この変化を検知してアンコイラから材料を巻きほぐします。ループのたるみと張りを検知してコントロールすることを、ループコントロールと呼びます。自動化システムの大事な部分です。タグ:
- 絞り加工製品を検討するときに、細かな部分を呼ぶときに困ることがあります。覚えておくと便利な各部の呼び方を示します。 【図1】は、円筒絞りに関する呼び名です。タグ:
- 曲げ加工製品を検討するときに細かな部分を呼ぶときに困ることがあります。覚えておくと便利な各部の呼び方を示します。 【図1】は、製品形状に関する呼び名です。タグ:
- プレス加工では、プレス加工スピード(spm)を上げることで生産性が高まると考える人が非常に多いです。机上の計算では不具合が考慮されないため、数値だけが一人歩きすることとなります。 実際にはいろいろな問題があります。例えば、コネクターの加工では、高速化したことでスプリングやストリッパボルトの破損が多くなる。送られる材料のバタツキが大きくなり金型内で送りミスが多発するようになり金型破損が多くなる。など今までになかったトラブルに悩まされることがあります。これらはspmに金型が適合していないためのものなので、改善することで解決可能な内容ではあります。 生産数を無視してspmを上げても生産が早く終わってしまい、次の仕事の待ち時間や段取り替えが多くなり、設備稼働率が下がってしまい、結果、生産性は向上していないというような問題も見受けます。 また、送り装置やアンコイラー等の周辺設備の価格も上がり、プレス機械を含めたシステムの設備費が高くなり、設備償却費の関係から時間単価が上がり、spmアップによるコスト低減効果が相殺され、期待するほどのコスト低減とならないこともあります。タグ:
- ブランク抜きのさん幅は【図1】に示すように、送りさんと縁さんがあります。ブランク抜きの一般的なさん幅の最小値を【表1】に示します。送りさんに対して縁さん幅が広いのは、材料幅ガイドとの関係です。材料幅に対して滑らかな材料移動ができるように材料幅ガイドは少し広く取ります。そのために縁さん幅は変動しますが、最大偏っても最小さん幅が保てるように、送りさんより広げておきます。タグ:
- 軟鋼板(SPC材)を想定して話を進めます。一般的に適正クリアランスを採用して抜き加工すると、切り口面には板厚の30%程度のせん断面が現れます。適正クリアランスは板厚の6%〜8%です(【図1】)。適正クリアランスは工具の持ちが最もよくなる条件です。製品によっては、切り口面のせん断面長さを長くしたい、抜きだれを小さくしたい製品もあります。このようなときには、精密抜き用のクリアランスというものを採用します。クリアランスは3%〜5%と小さくなります。タグ:
- 絞り加工では【図1】に示すように、ノックアウトによってダイの中に入り込んだ製品を押し出します。そのときに製品の材質が軟質で板厚が薄く、更に底部の肩半径(パンチ肩半径)が大きい形状のとき、【図2】のような形状のノックアウトで排出すると製品の底部が変形してしまいます。 このような製品では【図3】に示すように製品の底半径にノックアウト形状を合わせておき、絞り底の部分で押し出すのではなく、丈夫な製品肩半径部分で押し出すようにします。ノックアウトは単に押し出しができればよいと考えて金型を設計すると、このような製品では思わぬ失敗をします。タグ:
- 絞り加工(円筒絞りをイメージ)の工程検討では、ブランク展開、絞り率からの絞り回数決定と進めますが、板厚を省略しても検討を進めることができます。しかし、実際の絞りをイメージすると、ブランク計算で得られたブランク直径が100mmとしたときに、板厚が1mmのときと0.1mmのときでは絞りやすさが同じであるとは誰しも考えないと思います。 ブランク直径と板厚の関係から絞りの状態を判断しようとするものが「相対板厚」です。相対板厚(【図1】参照)は次のように表されます。タグ:
- クイックダイチェンジ(QDC)金型は「迅速交換金型」とも呼ばれるものです。【図1】がそのシステムを示しています。QDCホルダとQDC金型から構成されています。 QDCホルダは、ダイセットにクランプとロケーションピンを有した構造のものです。ロケーションピンはノブで上下します。ロケーションピンは、ダイセットと金型に入れられるダウエルピン(ノックピン)が可動式になったものと考えられます。クランプはメカニカルまたは油圧等で、ワンタッチでロックできるように工夫されています。タグ:
- 安全金型(【図1】参照)とは、人が作業するときに身体の一部(主に指先)が危険領域(パンチとダイの間)に入り込まないように、手や指の入りそうな部分のすきま(AやB)が8mm以下の状態に作られた金型を言います。最近では女性の指は細いので「8mmでは大きすぎる。6mm程度が妥当なのではないか」との意見もあります。しかしこのような金型にすると、実際の作業は大変に使いづらい金型となります。安全金型の考えを取り入れながらの自動化型が【図1】の構造でもあるのです。たたき型と呼ばれるものです。上型と下型がストリッパボルトでつなげられ、上型はリターンスプリングで持ち上げられています。リターンスプリングは、ストリッピング力+上型重量以上の強さが必要です。 この構造にすると金型段取りも早くなりますし、パンチとダイの関係も安定します。抜きだけの製品には適しています。注意点は、上型をプレス機械のスライドで押す(たたく)ようになりますが、スライドはストローク長さ動きますから、この部分で手を挟まないように蛇腹等での保護が必要です。タグ:
- 【図1】は上曲げと下曲げのある製品を加工する金型です。この構造ではパンチとダイがスプリングで保持されている可動式のパンチとダイを採用しています。このようなパンチやダイを、フローティングパンチ、フローティングダイと呼びます。 なぜこのような面倒な構造が必要になるかを説明します。【図1】の構造で下曲げを考えます。可動パンチ=パッドとなります。可動パンチ(パッド)は材料を押さえ、その後パッド後ろのスプリングがたわんで下曲げパンチが下曲げを開始します。可動パンチ(パッド)と下曲げパンチはこの関係にないと曲げができません。 上曲げを考えると、可動パンチが上曲げのパンチです。可動ダイ=上曲げのパッドとなります。可動パンチが材料を押さえ、上曲げのパッド(可動ダイ)を押し下げることで上曲げが始まります。 可動パンチ、可動ダイはパッドとの複合部品であることが分かります。パッドは押さえながら動く部品ですから、スプリングで保持され浮いた状態となります。この部品をパンチ、ダイと共用するため「フローティング○○」と呼ばれるようになりました。このようにフローティング部品は、複合加工や順送加工のときに出てくることの多い金型構造です。 【図1】で、スプリングAとスプリングBの強さ関係を考えます。タグ: