プレス金型部品
- 薄板の抜き加工で、パンチとダイのクリアランスを合わせることに設計で苦労することがあります。それは金型を構成する金型部品に誤差があり、その兼ね合いで最適条件を作ることができなくなることがあるからです。 最も精度の良いと思われる研削加工で温度管理されたところで金型部品を加工しても、±2μmが位置や形状精度としては良いところではないでしょうか。一般的には±5μmの精度でしょう。 このような精度で、SPCCの0.1mmの材料を4〜8%のクリアランスで加工することを考えるとき、クリアランスのねらい値を6%(6μm)とすると、+6/-2μmの実寸法となります。最も精度が期待できる加工法を採用しても、金型部品精度で金型を作ることは難しいかも知れません。しかし実際には、この程度の板厚を加工する金型は問題なく作られています。 なぜできているのでしょうか。それは、どこかで加工の誤差を調整することを行っているからです。タグ:
- 軟鋼板を絞った時に、側壁に薄いリング状の縞模様が発生する不具合現象が「ストレッチャストレイン」であることがあります。 ストレッチャストレインは【図1】に示す「荷重−伸び線図」で、荷重をかけなくとも伸びてしまう「降伏点伸び」によって起こる現象です。 スキンパス圧延(軟鋼板を1%程度薄くする軽い圧延)を行うと、降伏点伸びは無くすことはできます。 しかし、軟鋼板にはひずみ時効現象があり、スキンパス圧延を行っても、時間がたつと降伏点伸びがまた現れてしまうことがあります。タグ:
- 通常のせん断加工を普通せん断と呼びます。切り口面は「だれ」「せん断面」「破断面」「バリ」で構成されています。このうちの「だれ」「破断面」「バリ」は好ましくないものと考えられています。「精密せん断」とは、普通せん断での好ましくない部分を無くして、良好な切り口面を得ようとする加工法です。 精密せん断のいくつかを説明すると、 (1)シェービング加工 シェービング加工は、普通せん断された切り口面を薄く削り、良好な切り口面を得る方法です。削り量は材料板厚の3〜10%程度です。厚板になるとクリアランスが大きくなるため、1回にシェービング加工では良好な面が得られず、2回加工とすることもあります。このような小さな削り量を加工するため、クリアランスはできる限り小さくします。 (2)仕上げ抜き法 仕上げ抜きは、1回の加工できれいな切り口面を得る加工法です。抜きのクリアランスを「0(ゼロ)」に近づけて加工する方法です。そしてパンチ、ダイのどちらかの肩にR0.3程度の丸みをつけます。ブランク抜きであればダイに丸み、穴抜きであればパンチに丸みをつけます。 この方法ではきれいな切り口面が得られるのですが、ブランク抜きではダイに丸みをつける関係から、反りが大きくなることが欠点です。タグ:
- 材料の異方性とは、方向(たて、横、板厚)によって性質が異なる現象をいいます。 円形ブランクから円筒絞りをしたら耳が発生した、その原因が材料の異方性であることはよく知られています。他に円形に打ち抜いた形状を測定すると楕円形になっていたり、曲げのスプリングバックも異方性の影響と言えるのです。 異方性は製品の精度を悪くします。塑性に関係する異方性には「面内異方性」と「板厚異方性」があります。 異方性を現すものがr値です。r値は【図1】に示す引っ張り試験で、X方向に10〜20%伸ばします。そのときのY方向とZ方向とを測定して、その比で現します。この時「r=1」の時は等方性で、「r≠1」のとき板厚異方性があるといいます。面内異方性とは引っ張り試験片を0°、45°、90°方向に採取して得られたサンプルから得られた性質の違いをいいます。その内容をr値がよく現しています。各方向のr値はr0、r45、r90と示します。面内異方性は次の式で現されます。 ⊿r=(r0+r90)/2-r45…面内異方性タグ:
- 外段取りで金型を準備してプレス機械の停止時間を短縮することは、段取りの重要な部分です。特に大きな金型になると、何もしないでいると、プレス機械の停止時間は非常に長いものになります。 その対策として使われるものが「金型交換テーブル」です。多い形はプレス機械の前に固定して使うものです。床にレールを敷き移動できるようにしたものもあります。 交換前の金型は金型置き台に置かれます。この置き台を回転式にして外した金型と、これから取り付ける金型の交換を容易にする工夫をしたもの等があります。 金型置き台の前には折りたたみ式の可動部を設けて、プレス機械との関連を取ります。可動部の動きは手動式のものや油圧等を利用したものがあります。可動部分の空間は作業者が作業をするスペースであったり、スクラップ処理をするためのスペースだったりします。 金型置き台と可動部の上面はローラ等を組み込み、金型移動を容易にしています。金型置き台にはストッパを設けて、誤って金型が滑り落ちないようにします。タグ:
- 小さな金型では、手で持ち、金型をプレス機械のボルスタプレートに乗せることができます。しかし金型が大きくなると、台車等からプレス機械のボルスタに移す作業が大変になります。この作業を手助けするために作られたものが「プリローダ」です。 【図1】のように、ボルスタの前に取り付けます。構造は突き出した形状の上にベアリングが組み込まれていて、重い金型を小さな力で動かせるようにしています。ボルスタプレートにはダイスライダを組み込んでおくと、更に段取りが容易になります。ダイスライダは機械式または油圧で僅かに上下します。金型段取りが完了したときには下げて置きます。プリローダは金型段取りが済んでしまうと、プレス作業には邪魔になります。そのため、着脱式としたり折りたたみ式とするなどの構造が多いです。タグ:
- 【図1】は、ラック・ピニオンを利用したアンローダです。ラック・ピニオンは往復運動を回転運動に変えたり、その逆の動作をさせたりすることによく使われます。このアンローダのように、往復運動の方向を変換する機構としても使われます。タグ:
- 上型に製品が残る金型では、空気圧等で型外に加工した製品を排出しますが、信頼性に疑問を持つことがよくあります。確実に回収したいときに使われる方法が「ショベル式のアンローダ」です。 機械式方法の代表的なものが【図1】のパンタグラフを利用したアンローダです。自社でも容易に作ることができます。プレス機械のストロークに連動して動くので、間違って金型でショベル部分を挟んでしまうことはありません。金型に取り付けて専用とすれば、段取りを簡略化できます。比較的小さな製品に採用されることが多いです。 注意点は、リンクの可動部(節)を定期的に点検して、摩耗やゆるみが無いことを確認することです。大きな製品用のリンク式アンローダ等もあります。タグ:
- ダイプレートを通過して、落ちる小さな製品を回収する方法に「ホース」を使う方法があります。散乱せずに回収できるのでよい方法なのですが、ホースの中に詰まると大変なことになります。できれば通過センサーと併用して、確実に一つずつ回収できたことを確認することがよいです。 また【図1】に示すように、自然落下だけではなくエアーの流れを作り、その流れに乗せて回収することもよい方法です。ホース内を流れるエアーは圧力ではなく、早さが大事です。エアーの流れを速くするためには、狭いすきま(または小さな穴)からエアーを流すようにします。このようにすると減圧効果も現れ、製品を吸い込むように働きます。タグ:
- エアーを利用して製品を回収することは多くあります。飛ばされた製品は散乱しないようにダクトを使うことがあります。 ダクトを薄い金属板で作ると、吹かれたエアーがダクトの壁にぶつかり、流れを乱してダクト内から跳ね出してきたり、製品がダクトの壁に当たり変形する等の不具合を起こすことがあります。 これはエアー流の乱れが原因することが多いのです。エアー流を素直に通過させるためにダクトの壁をネットにします。 このようにすることでダクト内のエアー流は安定し、製品の壁に当たる衝撃も和らぎ、製品回収が容易になります。 ダクトとせずにネットの壁を作り、エアーをそのまま通過させ、製品はネットに当て下に落とすようにするだけでも効果があります。タグ:
- 型上に残った製品を型外に排出する、最も簡単な方法がエアーで吹き飛ばすことです。【図1】がそのイメージです。金型の外側にエアーノズルを取り付けて、そこからエアーを吹きます。上型は上死点近くにあることが多いと思います。このような状態でノズルからエアーを吹くと、エアーは拡散して広がり、製品は思わぬ方向へ飛ぶことがあります。ときにはダイセットのガイドポスト等に当たり、跳ね返って型内に入り込み、トラブルを起こすこともあります。 【図2】は型内に可動式のノズルを取り付けた例です。ストリッパの動きに合わせて可動します。【図】ではノズルが上昇してエアーが吹かれています。この時ストリッパはまだ上昇途中で、ノズルから出たエアーはストリッパとダイプレートの間を流れるため拡散することなく製品を一定方向に飛ばすことができます。タグ:
- 成形加工でのトリミングのスクラップやカットオフ形式の順送加工では、ダイプレート上に残る製品の回収方法として、シュート(【図1】)はよく使われます。シュート上をうまく材料が滑ることを期待しますが、面積の大きなものでは油等の影響もあり、シュート上に張り付いてしまい、回収がうまくいかないことがあります。 その対策としては接触面積を小さくすることが思いつきます。【図2】は細い丸棒を取り付けて抵抗を減らそうとするものです。丸棒がガイドの役目を果たして一定方向に滑り落ちます。 丸棒の取り付けには溶接を使うことが多いのですが、面倒なこともあり、その対策は【図3】に示すように、板材の面に小さなエンボスを作り、接触面積を小さくしてシュート上の滑りを改善しようとする方法です。エンボス加工された材料が市販されています。タグ:
- 三次元トランスファー送り装置の動きは【図1】に示すように、トランスファーバーの「開閉」動作と「送り」と「戻り」の運動に加えて、製品を「上下」にも動かし移送します。上下の動作が入ることで、金型にはネスト(位置決め)を備えて、その中に置くことができるため、金型の構造設計が通常の単工程型に近いものが使えるようになり、おおくの製品加工に対応できます。 しかし、トランスファーバーの動きが複雑になり各動作に時間が取られるため、プレス加工スピードは遅くなります。タグ:
- 二次元送りのトランスファー送り装置は、トランスファー加工の中で最も多く利用されている製品の移送方法です。トランスファー送り装置の動きは【図1】に示すようにトランスファーバーの「開閉」動作と「送り」と「戻り」の運動で製品を移送します。 製品は平面上を移動します。そのため製品移動は金型面を滑るように移動しますから、製品移動面の高さを統一しておく必要があります。フィンガーが製品を掴んだ状態から開放するときに、製品が位置ズレを起こして、加工ミスにつながる恐れがあることから、金型には先押さえが組み込まれていて、フィンガーが製品から離れる直前に先押さえが働き製品を押さえ、位置ズレを防ぐようにします。タグ:
- 一次元送りのトランスファ送り装置は【図1】に示すように、トランスファーバーが「送り」と「戻り」の往復直線運動で製品を移送します。このような動きから「直線トランスファ送り装置」と呼ぶこともあります。動きがシンプルなので加工速度を高めることが比較的容易です。タグ:
- プッシャフィーダは、ロールフィーダやグリッパフィーダのようなコイル材を扱う送り装置とは異なり、【図1】に示すように、ブランクを積み上げて金型内に送り込む装置です。コイル材やシート材を扱う送り装置を「一次送り装置」と呼びます。コイル材やシート材から作られたブランクや切り板(スケッチ材)を搬送する送り装置を「二次送り装置」と呼びます。トランスファフィーダ等も二次送り装置の仲間です。 【図1】は手動式のプッシャフィーダです。マガジンに積まれたブランクをプッシャバーで押し出し、金型のネストまで搬送してネストに落とし込み加工できるようにするものです。「マガジンプッシャフィーダ」と呼ぶこともあります。プッシャバーはブランク搬送を行うガイドレール内に置かれスライドします。 ここで示した例では、プッシャバーに取り付けられた「取っ手」を作業者が操作して、ブランクを金型のネストに搬送する構造ですが、プッシャバーの動作をエアシリンダで行うものや機械的に行うものなどがあります。タグ:
- ヒッチフィーダは、スプリングを利用した爪クランプで材料を掴み、送り動作をします。 送り動作は往復運動で行います。移動クランプと固定クランプの2種類のクランプを持っています。この形からグリッパフィーダの一種といえます。 ヒッチフィーダは金型に取り付けて使用します。往復運動の動作は、上型またはプレス機械のスライドに取り付けられたカムドライバで移動クランプを動かして行います。 【図1】は、送り動作に入るための戻り動作に移る直前の状態を示しています。カムドライバが下降してきて、移動クランプのカムフォロアに接して、押し戻そうとしているところです。タグ:
- グリッパフィーダは2つのクランプを操作して、材料送りを行います。2つのクランプの一つは固定クランプ、材料を押さえたり、開放したりします。もう一つのクランプは移動クランプです。材料を掴み、移動させます。ロールフィーダはロールの回転を利用して材料送りを行いますが、グリッパフィーダは移動クランプの往復運動で材料送りを行います。 クランプと往復運動の動作を空気圧利用で行うエアーグリッパフィーダと、プレス機械の回転軸から駆動力を得て動作するメカニカルグリッパフィーダがあります。 グリッパフィーダは往復運動であることから、高速送りには不向きであると言われてきましたが、メカニカルグリッパフィーダでは、かなりの高速加工に対応します。エアー式のグリッパーフィーダは取り扱いが容易なことから、金型に取り付けて専用化して使うことも行われています。 【図1】は、グリッパフィーダの動作を説明しています。タグ:
- ローラフィーダは、送りロールと上ロールで材料を挟み、送ります。材料送りが完了した後に、金型はパイロットで材料送りの誤差を修正します。この時に、ローラフィーダは材料の押さえを解除して、パイロットでの材料送り長さ修正を容易にする必要があります。この材料押さえを解除する機構を「ローラリフタ機構」と呼びます(【図1】参照)。タグ: