射出成形用部品
- プラスチック射出成形機は、プラスチック材料を流動状態にして金型のキャビティへ射出注入し、固まった成形品を金型を開いて取り出す加工をするための機械です。射出成形機は今日では世界の主要工業国で競うように多数のメーカーがさまざまな種類の機械を製造販売しており、統一された標準構造で製作されているわけではなく、使用用途や機械の大きさ、精度等によって各種の構造があります。市場で最も普及しており一般的な射出成形機は、以下のような構造をしています。 1) 使用材料:熱可塑性プラスチック用 2) 可塑化・射出構造:スクリューインライン方式 3) 動力源:油圧式、電動式、ハイブリッド式(油圧式と電動式の併用) 射出成形機は、一般に下記の機能部分から構成されています。タグ:
- プラスチック射出成形金型の設計技術を体系的に習得するためには、工学の知識をできるだけ満遍なく蓄積をすることが大切です。金型設計に要求される知識やノウハウは、知らないうちにだんだん進歩しており、基礎をきちんと理解していないと周囲の状況が変化したときに着いていけなくなってしまいます。一般的にプラスチック射出成形金型の設計に必要な工学知識は次のようなものがあります。 機械設計製図 →金型部品の設計法と製図法を知る 機械工作法 →金型部品の機械工作の方法を知る 材料力学 →金型部品の強度計算や変形計算の方法を知る 熱力学 →金型の熱の出入りの計算の方法を知る 流体力学 →成形材料の流動や冷却水の流動の計算を知る 基礎化学 →金属や元素の化学反応の基礎を知る 基礎物理学 →機械力学や熱力学の基本を知る 金属材料学 →金型部品の金属素材の特徴を知る 高分子材料学 →合成樹脂の材料特性を知るタグ:
- プラスチック成形材料は、石油ベースがほぼ全てでしたが、この数年の間にバイオベースポリマーが様々開発され、今後急ピッチで普及する可能性が高くなっています。バイオベースポリマーといってもたくさんの種類があります。主な素材としては下記の素材が開発されています。タグ:
- プラスチック材料には、実は、さまざまな補助材料を添加ブレンドして、実用性に適応した改質が行われている場合が多いのです。補助材料には、その目的によっていろいろな成分が実用化されています。 以下に補助材料の主要なものを紹介します。 1.可塑剤 プラスチックに柔軟性を付与したり、成形加工時の金型内での流動性を向上させるために使用されます。主に低分子物質を用います。 2.熱安定剤 プラスチックが熱によって分解することを防止するために使用されます。 3.酸化防止剤 プラスチックが、酸化して劣化することを防止するために使用されます。 4.光安定剤 太陽光線や蛍光灯からの紫外線によりプラスチックが劣化することを防止するために使用されます。 5.滑剤 プラスチック成形品が、金型から離型しやすくするために使用されます。ワックス(ろう)や界面活性剤が使用されています。 6.表面処理剤 プラスチックの接着性を改善するために使用されます。タグ:
- プラスチックの性質や強度等を改質するためには、さまざまな方法が考案されています。 その方法は、大きく3つの考え方があります。 化学的改質方法 物理的改質方法 放射線改質方法 改質にはその用途により以下のような具体的な方法が実用化されています。タグ:
- プラスチック成形品を射出成形加工した後に、塗装や機械加工などの二次加工を行う場合があります。成形加工のみでは表現できない形状や色彩などはこれらの二次加工を行って最終的な商品に仕上げていきます。二次加工がある場合には、金型の設計においてはこれらの加工に適応したノウハウをあらかじめ盛り込んで成形品をデザインしておく必要があります。 以下に主要な二次加工の種類を挙げます。タグ:
- プラスチックは、大別して熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂があります。読者のほとんどは、熱可塑性樹脂の射出成形金型た成形加工に携わっていると思いますが、最近では熱硬化性樹脂の射出成形加工も行われるケースも増えてきています。 基本的な事項ですが、熱硬化性樹脂と熱可塑樹脂ではその性質が大きくことなっています。これらを整理してもう一度復習を図りたいと思います。
- プラスチック材料には、ポリマーに何種類かの添加剤を混ぜて、射出成形に用いることがあります。様々な用途向けに添加剤は開発されており、これらを組み合わせて配合することで同一の種類であってもいろいろなグレードの樹脂があるということになります。 以下に主要な添加剤とその目的を挙げてみます。タグ:
- 耐熱性に優れ、高い機械強度を持つプラスチックとしてアラミド(aramid)が挙げられます。アラミドは、芳香族ポリアミド(aromatic polyamid)のことで、略語からアラミドと呼ばれています。 ポリアミド(polyamid)は、デュポン社の商標名「ナイロン(Nylon)」として著名ですが、ポリアミドは、脂肪族ポリアミドに分類されるために、これらと芳香族ポリアミドは別の種類であるとして区分けされるのが一般的です。 アラミドには、メタ型アラミドとパラ型アラミドがあります。 メタ型アラミドは、耐熱性に優れています。代表的な樹脂として、ポリメタフェニレンイソフタルアミドがあります。分子構造に2個のベンゼン環を持っています。低温溶液重縮合という特殊な製法で作られています。メタ型アラミドは、1500℃程度の火炎に対しても燃焼しない特性があり、消防服や防炎素材として広く活用されています。 パラ型アラミドは、機械強度に優れています。代表的な樹脂として、ポリパラフェニレンテレフタルアミドがあります。これも分子構造中に2個のベンゼン環を持っています。タグ:
- 熱可塑性プラスチックは、高分子材料であることが知られていますが、高分子の長さは「分子量」という単位で考えられています。分子量は、材料の種類や製法によって変動します。分子量が大きいほど、高分子の長さは長くなります。反対に、分子量が小さいほど、高分子の長さは短くなります。 分子量の違いによって以下のような物性値の変動の傾向があることが知られています。 分子量が小さい場合の傾向 ○金型内での流動性が良好になる。 ○シリンダー内での混練性が良好になる。 ○金型内での冷却固化速度が速くなる。 ○剛性が少し高くなる。 分子量が大きい場合の傾向 ○引張強度が向上する。 ○衝撃強さが向上する。 ○耐熱性が多少改善される。 ○疲労特性が良好になる。 ○クリープ破断強度が良くなる。 ○対薬品性が良好になる。 ○ブロー成形性が良好になる。 ○押し出し成形性が良好になる。タグ:
- 熱可塑性樹脂は、温度が融点以上になると溶融し、液状になりますが、冷却していくとだんだん粘度が高くなりゴム状態になり、最終的には固化していきます。ゴム状態から固化状態(ガラス状態と呼んでいます)になる境界の温度を「ガラス転移温度」と呼んでいます。ガラス転移温度は、Tgと一般に表示されています。 Tgは、樹脂の種類によって決まる物理量です。Tgを知ることにより成形品がキャビティ内で冷却する時間や突き出し可能な成形品温度を推測することができます。 以下に主要な樹脂のTgを示します。タグ:
- スチレン系プラスチックは、硬質の射出成形品に多用されている樹脂です。主な種類には以下の材料があります。 (1) ポリスチレン (2) ハイインパクトポリスチレン (3) ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体) (4) m-PPE(変性ポリフェニレンエーテル) スチレン系プラスチックには、共通して以下のような特徴があります。タグ:
- オレフィン系プラスチックは、射出成形に多用されている成形材料です。代表的な樹脂としては下記が挙げられます。 (1)ポリプロピレン(PP) (2)低密度ポリエチレン(LDPE) (3)エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA) (4)ポリメチルペンテン(TPX) (5)超高分子ポリエチレン ポリオレフィン樹脂は、共通して以下のような特徴があります。 ◇比重が1以下で軽い。 ◇水に浮く。 ◇柔軟性がある。 ◇衝撃を吸収する。 ◇疲労特性が良好である。 ◇低温で成形加工できる。 ◇耐薬品性に優れている。 ◇柔らかい。 ◇剛性が低い。変形しやすい。 ◇耐熱性が低い。 ◇クリープ特性が低い。 ◇透明な樹脂が限定されている。 ◇ガスバリヤー性が低い。 ◇低価格。 ◇フィルム状に伸ばすことができる。 ◇着色が容易である。 ◇金型温度が低温でも射出成形加工できる。 ◇ブロー成形もできる。タグ:
- プラスチック射出成形で使用される合成樹脂材料は、原油や天然ガス、石炭等の天然素材から工業的プロセスを経て製造されています。一般の成形加工業や金型製造業では少し縁遠い存在かもしれませんが、日頃使用している合成樹脂がどのような工程で製造されているのかを知ることは有意義です。今回は、主要な合成樹脂が製造される工程を紹介します。 ※工程は概略のプロセスを示し、実際にはさらに詳細な工程が組み合わされている場合があります。
- 今回はこれまで解説してきた金型の熱損失について応用問題を計算練習してみましょう。 【問題】 横型射出成形機に使用するプラスチック射出成形金型(2プレート構造。コールドランナー方式)において、射出成形時に発生する熱損失を計算せよ。 ただし、モールドベースの材質は、S55Cとし、金型の温度調節方式は水冷とし水温の設定は55℃とする。金型の側面積の合計は、2250cm2とする。また、取付板の面積は0.05m2とし、断熱板は使用しない。室温は25℃とする。 【計算例】 (1)対流損失 対流熱伝達率=8kcal/m2h℃と想定し、タグ:
- 今回は、金型のモールドベースの底面から射出成形機のプラテンへの熱伝達による損失について考えます。 金型は、射出成形機のプラテンにボルト、クランプ等で締結固定されて使用されます。そうすると金型の底面からプラテンへは接触によって熱伝達が生じることになります。 この熱伝達による損失は思いのほか大きく、金型のキャビティ表面の温度制御にも影響を与えることが知られています。 皆さんはモールドベースの取付板と射出成形機のプラテンの間に断熱版を挟んで使用したことがありますか?断熱板を挟む理由は熱伝達をコントロールするために採用しているのです。 それでは、モールドベース底面からプラテンへの伝達熱量の計算式を紹介します。 QTR=Ac・b・(θTM-θA)・β/βmタグ:
- 今回は、金型の側面からの輻射による放熱について考えます。 金型から大気中へ輻射される熱量は以下の計算式で表現されています。 Qr=As・ε・c((TTM/100)4-(TAT/100)4)タグ:
- 今回は、先回紹介した金型の側面からの自然対流により放出される熱量の計算例です。 【 問題 】 横型射出成形機に取り付けられたモールドベース(幅500mm×長さ400mm×厚さ230mm)から大気中へ自然対流により放出される熱量QCVはいくらになるか? ただし、金型の温度調節は水冷とし、冷却水の設定温度は60℃とし、室温は25℃とする。 【 計算例 】 まず、計算式は下記を使用する。 QCV=As・hs・(θTM-θA)タグ:
- 今回は、結晶性樹脂のプラスチック射出成形金型が溶融樹脂から受け取る熱量について、事例で計算をしてみましょう。 【 問題 】 ポリアミド6樹脂(ナイロン6)を成形材料とするプラスチック射出成形金型において、以下のような前提条件下、金型が金型内に射出された溶融樹脂から受け取る熱量はいくらになるか?タグ:
- 前回紹介したプラスチック射出成形金型が、溶融樹脂から受け取る熱量について、事例で計算をしてみましょう。 【 問題 】 ABS樹脂を成形材料とするプラスチック射出成形金型において、以下のような前提条件下、金型が金型内に射出された溶融樹脂から受け取る熱量はいくらになるか?タグ: