射出成形用部品
- ジェッティング(ジェットフロー)は、成形品の表面に蛇行した「くねくね模様」が現れる外観不良です。 ジェッティングは、ゲートからキャビティ内に射出された樹脂が、一気に猛スピードでキャビティ内を流動し、ゲートと反対側の壁に衝突した後に、ゲート近傍から充填が進行するために発生します。 熱可塑性プラスチックの射出成形加工とは物理現象は異なりますが、イメージとしては、練り歯磨きチューブをギュッと握ったときに、歯磨きペーストが不安定ににゅるにゅると空中に射出される現象と類似した、粘性流体の挙動であると考えてください。 ジェッティングの対策は、以下のような方法が考えられます。
- 生分解性プラスチックの代表的な樹脂の一つとしてポリ乳酸があります。ポリ乳酸は、植物由来の生分解性プラスチックで、以下の合成プロセスによって化学合成され、また生分解作用によってリサイクルがなされます。タグ:
- プラスチック成形品は、使用後に廃棄物として処分されるか、リユース(再利用)、リサイクルされる運命にあります。 プラスチック成形品の素材のほとんどは、今日では石油由来であり、成形品は燃焼処理等をしない限り、半永久的に分解せずにそのまま地球上に残ってしまいます。 このような状況は地球環境を破壊することにつながりますので、プラスチック成形品も環境保護のために何らかの法規制を敷いて、循環型社会を構築すべきであるとの考えが支持される社会になってきています。 日本では、循環型社会基本法が2000年6月に施行され、この法律を基本として各種の循環型社会を目指すための法律が制定されています。 これらの法律には、以下のようなものがあります。 1. 容器包装リサイクル法 ペットボトル、プラスチック容器等のリサイクルに関する法律です。 2. 家電リサイクル法 テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機を対象とした消費者からの引き取り、回収等を規定した法律です。 3. 自動車リサイクル法 使用済み自動車のリサイクルに関する法律で、2005年1月から施行されました。タグ:
- プラスチック射出成形機は、そのほとんどがインライン方式射出成形機です。この方式は、射出シリンダーの内部に、可塑化スクリューが組み込まれており、スクリューは前進することによって樹脂を射出することが可能です。一般の射出成形加工を行うためには、コストパフォーマンスと要求品質が合致しますので、このタイプの機械が好まれています。 これに対し、プリ・プランジャー式射出成形機という方式は、可塑化スクリューと射出シリンダーが独立している方式です。この方式は、インライン方式射出成形機で使用されているチェックリングが不要なので、チェックリング部からの樹脂の逆流が生じないため、安定した射出を実現することができます。 したがいまして、計量された樹脂の密度が安定しますから、成形品の重量ばらつきを小さく抑えることができます。その結果、成形品の寸法が安定し、ばりやひけの発生も抑えることが容易になります。 保圧が安定するということは、成形品の離型抵抗も安定しますので、突き出し時の変形状態も安定させることができます。 このような特徴を有するプリ・プランジャー方式射出成形機は、以下のような成形に適していると考えられます。タグ:
- 熱可塑性エラストマーは、TPE(Thermo Plastic Elastmer)と俗称で呼ばれている、ゴム状の軟質特性を持った熱可塑性プラスチックです。 一般にゴムは、熱硬化性であり、射出成形加工は極めて困難であるとされてきました。 しかしながら、射出成形が可能で、ゴム状の成形品が得られれば、低コストで生産が可能であることから、TPEの商業化がさまざまに研究されてきました。 現在では、下記のような種類のTPEが実用化されています。タグ:
- 生分解性プラスチックは、土中や大気中のバクテリアや微生物によって、生物学的に分解されるプラスチックのことです。 従来の石油化学によって合成されるプラスチックは、微生物によって分解されることはなく、半永久的に廃棄物として残存するものと考えられてきました。ところが、最近の化学技術の発達によって、微生物によって水や二酸化炭素に分解されるプラスチック材料が開発されるに至っています。一部の材料は既に商業化されて各種の射出成形品に使用されています。 生分解性プラスチックで成形された成形品は、使用後に土中に埋設したり、生ごみと一緒にコンポストへ混ぜることによって、分解されてしまいます。地球環境の保全や地球温暖化防止には最適な素材です。 工業製品や包装資材として生分解性プラスチックを使用するためには、ある程度の強度や耐熱性、食品衛生基準のクリアー等が必要になってきますが、これらの要求を満たした素材が次々と商業化に成功しています。 今年の3月に開催される愛知万国博覧会(愛・地球博)では、レストランで使用される食器は生分解性プラスチックで成形されたものが使用されることになっており、2月に開会した通常国会の小泉内閣総理大臣の施政方針演説でもこのことが明言されています。タグ:
- 生分解性プラスチックは成形品を土中等へ埋設すると、バクテリアや細菌類によって生物学的に分解される特性を持ったプラスチックです。 このような特徴は、石油由来のプラスチックと比較しますと、環境保護には最適な特性であると言えます。 生分解性プラスチックには、透明性、耐熱性などの工業上必要とされる特性を有する素材も開発が進められており、家電製品、OA機器部品、食品容器、自動車内装部品などに採用される事例が増えてきています。 この3月に開催される愛知万博(愛・地球博)では、生分解性プラスチックを多方面で採用され、例えばレストランで使用する食器は、すべて生分解性プラスチックを使用することになっています。パソコンの部品についても大手メーカーが採用を決定しており、今後は環境保護やリサイクル法の関係で、需要が急増することものと考えられています。 自動車の内装部品では、トヨタ自動車が今後ポリ乳酸製品を順次採用することを公表しています。 主な生分解性プラスチックには、以下のような素材があります。 ( )内は主な原材料メーカーです。タグ:
- プラスチック成形材料は、一般にペレット状態に加工されて、紙袋などに入れられて原材料メーカーから搬入されてきます。 ペレットには、大気中の水分が吸湿されていますので、水分が多く含まれたままで射出成形加工してしまいますと、樹脂の種類によっては加水分解を発生したり、物性が低下したりする場合があります。また、銀条(シルバーストリーク)が成形品の表面に発生したり、ガスによるショートショットや焼けが発生しやすくなる場合もあります。 そこで、成形材料の多くは、ホッパードライヤーへ投入する前に、箱形乾燥炉で予備乾燥させることが必要になります。 予備乾燥は、適切な乾燥温度と乾燥時間を守ることが推奨されます。適正な温度以下でいくら長時間乾燥させても、水分は思うように排除できない場合があるからです。予備乾燥が終わった材料は、できるだけ早く使いきるようにします。余ってしまった材料を後日使用する場合には、再度の予備乾燥を行いましょう。 【表1】には、特殊なプラスチックの予備乾燥条件を示しています。 【表1】プラスチック成形材料の予備乾燥湿度
- LSRとは、Liquid Silicone Rubber(液状シリコーンゴム)のことです。 射出成形加工に使用できるシリコンゴムとして、従来は2種類の液状素材を混合させて成形加工する方法が主流でした。主剤と硬化剤をミキシングさせ、金型をカートリッジヒーター等で昇温させておいて、化学反応によって硬化させます。 近年では、ポリアミドに密着親和性が良好な液状シリコーンゴムが開発されるに至っています。このシリコーンゴムは、金型表面には密着しませんが、ポリアミド成形品には強力な接着力を生ずる特性を有しています。 したがいまして、2材質射出成形によって、ポリアミドとシリコーンゴムの複合成形品を生産可能です。 自動車部品のシーリング、家電部品のシール材、フィルター、パッキンなどに応用が検討されています。 多数個取り金型も実用化されており、ヨーロッパでは金型の開発が進んでいます。環境汚染防止対策や衛生用途に、このタイプの液状シリコーンゴムは、急速に応用が検討されています。 このほかにPBT用、PC用の選択接着性能タイプLSRがすでに開発されています。タグ:
- プラスチック射出成形では、細いリブの先端部等にガス焼けが発生し、成形品の一部が黒変し炭化してしまう現象が見られる場合があります。 ガス焼けの発生メカニズムは、金型のキャビティ内部の空気が、キャビティ内部に流入してきた溶融プラスチックによって排気される際に、行き場のない閉塞状態となってしまった場合に、空気が圧縮されるために自己発熱し、それによって燃焼するために発生します。 空気は、気体ですので圧縮されますが、圧縮に伴って発熱します。自転車のタイヤに空気入れで空気を送り込む時に、空気入れが熱くなるのと同じ理屈です。 キャビティ内部の残存空気の圧縮は、通常0.1〜0.5秒程度の短時間に発生し、しかも1平方センチあたり200〜500kgfもの高い圧力で圧縮されるので、簡単にプラスチックの燃焼温度まで昇温してしまいます。(【図】参照)
- 樹脂をキャビティ内に充填させるためには、射出シリンダーから圧力を加えながら押し込んであげる必要があります。 樹脂は、加熱されて溶融している状態では、粘り気のある(粘性のある)流体となっています。しかし、粘性は、樹脂がスプルー、ランナーを流れながらキャビティに到達するまでに金型の表面から熱を奪われることにより、低下を始めます。粘性がある限界を越えて低下してしまうと、先端部が冷却により固化し、それ以上流動することができなくなってしまいます。 どのぐらいの距離まで先端部が冷却固化しないで流動が可能なのか?それを知ることによって、ゲートの数や配置、ランナー配置等を金型設計の時点で考慮することが出来ます。 その目安となる指標が流動比(L/t)です。 流動比は、ある特定の樹脂を、一定の板厚のキャビティ内を、一定圧力で流動させた場合に、流動先端が到達できる距離を示した実験的指標です。 「POM樹脂を、射出圧力900kgf/cm2で、板厚1mmのキャビティを流動させた場合、流動比(L/t)は、450〜530mmである」 といった表現をします。 流動比は、一般に下記の傾向を示します。タグ:
- 最近流行している新商品には、たくさんのプラスチック射出成形品が使用されていますが、そのいずれもが過去に生産された樹脂部品とは一味違っていて、特殊な形状や新しい樹脂を使用しており、過去の金型生産技術経験や射出成形加工経験では、対応が困難な事例が増加しています。 新しいプラスチック射出成形品の量産生産技術を開発するためには、金型の開発は避けて通れない関門です。 試作金型を起工して、技術上の問題点を試行錯誤しながら、新しい知見を見出していかねばなりません。 試作金型を起工する前に、プラスチック射出成形CAEを上手に利用すると、実験の効率化を図ることが可能です。 プラスチック射出成形CAEは、一般に以下のプログラムから構成されています。 (1)形状モデリングプログラム 解析用の成形品の3次元データです。 (2)自動メッシュプログラム 有限要素法という計算を実行させるために、解析用3次元データ上に三角形のメッシュ(網目)を自動で生成させるプログラムです。タグ:
- プラスチック射出成形金型は、金型の温度を20〜200℃ぐらいの温度範囲に保つことが必要なので、常温とは温度差が生じますから、金型の部品は熱膨張(場合によっては熱収縮)することになります。 金型の組立て調整は、常温で恒温室でなされるのが一般的ですので、実際の射出成形加工では温度領域が異なることになります。 金型の部品はそれぞれが独特の形状をしており、それらが複数複雑に組み合わされて、摺動や摩擦運動を行っています。 熱膨張の状態も極めて複雑で、理論で予測することは至難の業です。 熱膨張の問題は、経験的にノウハウを活用することがしばしば実務的手法として活用されています。 給油方法を工夫したり、接触面積を低減させたり、逃げを設けて変形量を吸収させる工夫もなされます。 また、温度調節機能を組み合わせて、熱の偏りをバランスさせる工夫をしたりもします。 ヒーターやマニホールドの周辺に冷却水路を設けたり、空気断熱層を設けたり、断熱板の工夫をする場合もあります。 摺動部品には、位置決め用レールを配置したりもします。 潤滑が困難な部分にはボールベアリングを採用したり、無給油合金を使うこともあります。タグ:
- プラスチック射出成形金型を設計するためには、使用する成形材料の特性を十分に知り尽くすことが重要です。 特に微妙な品質管理を必要とする成形品の場合にはなおさらです。 成形材料の特性データは、材料メーカーが提供する樹脂データと、実際にユーザーが使用による蓄積で得たデータがあります。 成形材料の特性データの中では、以下のファクターが重要です。 (1)成形収縮率 成形品の寸法を、ねらい通りのばらつき範囲内に抑えるためには、実用的な成形収縮率データが必要になります。 成形収縮率は、下記要因によって左右されます。 成形材料の種類 キャビティ表面温度 射出圧力 保圧の作用状況 ゲート位置 成形品の肉厚 流動方向 ガラス繊維等 これらのデータは成形条件を固定して、試験金型や実際の金型を使用して、サンプルを採取することが実務的です。
- プラスチック成形材料のペレットは、一般的に空気中の水分をある割合で吸水しています。 吸水量が多いと、射出成形機のシリンダーの中で溶融混練している過程で樹脂が加水分解を起こしたり(水を引き金として化学分解を起こす樹脂もあります)、射出成形した際に成形品の表面に銀条(シルバーストリーク)が走ったり、気泡、光沢不良、転写不良などを起こすことがあります。 そこで、成形材料のペレットは、あらかじめ乾燥装置に投入して水分を除去することが必要になります。 予備乾燥を適切に行わないと、流動性の変動や物性の低下、成形不良を引き起こす原因となります。 乾燥装置には、以下の種類が主に使用されています。 (1)熱風乾燥機 ホッパードライヤーと箱形乾燥炉が代表的な装置です。熱風をペレットに吹きかけて水部を蒸発させる方法です。 一般的な簡便な乾燥方法ですが、水分を充分に取り除きたい場合には適していません。
- プラスチック成形品を、他のプラスチック部品と接合して使用する事例もたくさんあります。プラスチック部品どうしを接合する手段には、以下のような方法があります。 (1)接着 接着剤を使用して接合する方法です。プラモデルの接合と原理は同じです。ホットメルト剤を使用して、より強固に接着する方法もあります。 (2)超音波溶着 超音波を接合面に発振させて、摩擦熱によって溶着させる方法です。短時間で比較的精密に接合ができます。超音波溶着機が必要になり、成形品の接合部分によって専用のホーンを製作する必要があります。 (3)熱風溶接 熱風を吹きかけて軟化させた部分を接合させる方法です。単純な方法ですので、精密な溶着には向いていません。 (4)スピン溶接 円筒形状の成形品を回転させながら接合させる方法です。接合面に発生する摩擦熱を利用します。 (5)摩擦溶接 接合面どうしを摩擦させて、発生する熱で溶着させる方法です。タグ:
- 金型から生み出されたプラスチック成形品は、その表面に着色したり、文字を印刷したりして、機能を向上させる二次加工がなされる場合があります。 プラスチック成形品に施される表面処理には、以下のような種類があります。 (1)塗装 有機系の塗料(いわゆるペンキのような塗料)等を、刷毛(はけ)で塗布したり、スプレー塗装する方法です。 用途によってマスキングを施したり、塗装の雰囲気を特別にしたりする工夫がなされます。 静電塗装や焼き付け塗装などの特殊な方法もあります。 (2)印刷 シルクスクリーン印刷、タンポ印刷、浸透印刷などがあります。文字や図柄を印刷する方法です。 印刷する場所が曲面であると結構印刷が困難になりますので、成形品の設計の際には、印刷したい場所は平面になるような工夫を盛り込むと良いでしょう。 (3)フィルム転写 薄い樹脂製フィルムに、あらかじめ印刷されている文字や絵柄を転写させる方法です。 金型の内部で転写させるインモールド転写法も開発されています。タグ:
- ポリサルホンは、耐熱水性が良好な透明樹脂です。酸やアルカリにも強く、機械的特性も安定しています。 食品や医療用の安全性が良好なので、この分野では採用例が増えています。 ただし、有機溶剤に対しては弱いので注意が必要です。 ガラス繊維強化も行われています。 主な用途は次の通りです。タグ: