切削工具
- Question 樹脂を加工するときのポイントは? [被削材例] MCナイロン、ポリエチレン、ポリカーボネイト、GFRP、CFRP Answer 樹脂の特性 繊維を含まない硬質ゴムやエンプラは、軟らかくて被削性は良好ですが、材料溶融点が低いうえ延性が大きいため、工具に溶着が発生しやすい欠点があります。 強化繊維を含むFRPなどの複合材料は、アブレシブ物質や硬質物質を含有し、切削性が悪い材料です。強化繊維の特性、大きさ、含有量によって被削性は異なりますが、一般的に、工具切れ刃が強化繊維を切断するたびに、切れ刃が擦り減っていく現象が見られます。
- Question グラファイトの特性 グラファイトは、炭素を主成分とする粉末焼結体です。微小な炭素粒子が超硬材料のバインダーを削除するため、チッピングなどによる工具寿命の低下が懸念されます。 Answer 工具選定のポイント ダイヤモンドコートやDLCコートなどのコーティングが施された超硬合金工具を選んでください。 刃形状としては、すくい角が大きく、切れ刃のシャープな工具を選んでください。グラファイトは脆性材料のため、摩耗やチッピングによって切れ刃の鋭さが鈍るとワークに欠けが生じやすくなります。
- Question 銅電極を切削加工するときのポイントは? [被削材例] タフピッチ銅、無酸素銅、テルル銅、銅タングステン Answer 銅電極の特性 銅および銅合金は、延性が大きく、切れ味の悪い工具で切削すると仕上げ面粗さ精度の低下や加工変形などが懸念されます。さらに、軟質のためバリが発生しやすいことも特徴です。 工具選定のポイント 切削時の溶着、および仕上げ面粗さ精度の低下を防ぐために、すくい角が大きく切れ刃のシャープな工具を選んでください。
- [2022/02/20公開] Question エンドミルに中ベコとフラットという説明の記載がありますが、どういう意味ですか? スクエアエンドミルや自由指定直刃エンドミルには中ベコやフラットというものがありますが、どういう違いでしょうか。 また、どのように使い分けをするのですか? Answer 中ベコ・フラットとは、底刃の形状のことです 底刃の形状の違いを表しており、用途によって使い分けます。 それぞれの特徴や使い分けのポイントは、以下の通りです。 スクエアエンドミルの中ベコとは 中ベコとは、すかし角と呼ばれる底刃を中心に向けて1~3°程度へこませて、逃がしている形状のことです。 切りくずの排出性をよくし、また切削抵抗も少ないので、特に記述がない限り一般的なエンドミルは、中ベコ形状になっています。 図1.底刃が中ベコのスクエアエンドミル
- Question 曲面加工を高精度に仕上げるには? 金型の曲面形状を仕上げる際、手作業による磨き工程にかかる時間を減らすために、切削加工で、できるだけ高精度に仕上げたい。どのような方法が有効でしょうか? Answer 高速ミーリングの有効性 ボールエンドミルによる曲面形状切削で良好な加工面粗さを得るには、1刃あたりの送り量とピックフィードを小さくしなければなりません。ところがそのような切削条件では、実送り速度が低下し、ツールパスが伸びるため、加工時間は長くなってしまいます。そこで、加工時間の延長を抑えながら加工面粗さを向上させるには、回転数を高める必要があります。回転数を高めると刃先の切削特性が向上し、バリの発生も抑えられ、加工面は高品位になります。 このような、微小な切り込みと高速回転を条件とする高速ミーリングは、小さい切削抵抗で安定した加工が可能になるため、工具摩耗の進行が遅いことも特徴です。ツールパスが長い仕上げ加工においても高精度な加工が長時間維持できます。
- Question ねじれ角の違うエンドミルをどのように使い分ければよいか? エンドミルのねじれ角は30°・45°・50°と種類がたくさんありますが、どのように使い分ければよいでしょうか? Answer ねじれ角の効果 エンドミルのねじれ角が大きくなると、ワークと切れ刃の接触長が長くなり、単位長さ当たりの切れ刃にかかる負荷が減少するため、工具寿命に有利になります。反面、切削抵抗は大きくなるため、保持剛性の高いホルダの適用など配慮が必要です。
- Question ポケット加工時の粗加工、中仕上げ加工を高速化したい ポケット加工は削り出し量が多いため、粗加工・中仕上げ加工時間の短縮を図ることが、不可欠になります。そのためには、どのような加工方法を採用し、どのような工具を使用すればよいのでしょうか? Answer ラジアスエンドミルによる高速ミーリング 粗加工・中仕上げ加工を高速化するために下記の方法では解決に繋がりません。
- Question ポケット加工時のドリル下穴加工を削減したい ポケット加工はまず、ドリルで穴加工を行い、穴径よりも小径のエンドミルを挿入し、横方向に切削する方式で行っています。加工時間の短縮を図るために、ドリル穴なしでポケット加工ができる方法を教えてください。 Answer ポケット加工時のドリル下穴加工を削減するには ドリル穴なしでポケット加工を行うには、スクエアエンドミルを用い、大きく2つの切削方法があります。
- Question 取りしろが大きな側面切削なので、高効率に切削を行える工具を探しています。どのような工具を選定すればいいのでしょうか? Answer 加工を高効率に行うための工具 刃先交換式カッターやラフィングエンドミルを使用し粗加工を行うことで、加工効率を大きく改善できます。
- Question 側面加工を安定して行うために、短い刃長のエンドミルを用いて、Z方向に多段加工を行っているのですが、段のつなぎめにスジが残ってしまいます。加工スジを抑えるにはどうしたらよいのでしょうか? Answer 加工面段差の発生メカニズム 切削面の加工スジは、エンドミルの外周切れ刃端が切削中に食い込むために発生する切削痕です。 切れ刃端部にR形状を設ける事により切れ刃端部の食い込みを防ぐことができます。
- Question 側面加工と溝加工、底面加工毎に工具を使い分けたくない 加工種類毎に、工具を揃えていくと、工具管理が煩雑になってしまいます。1本の工具で複数工程を加工できる工具はないでしょうか? Answer ネジレ、刃数違いによる工具の特徴 一般的に流通している2枚刃、4枚刃の30°ネジレ工具でも、側面加工と溝加工、底面加工を1本の工具で加工することは可能です。 ただし、2枚刃のエンドミルで側面加工を行うと、送りが上げられず、効率的な加工になりません。また、4枚刃のエンドミルで溝加工を行うと、外周の溝幅が狭いだけに、切りクズ詰まりが懸念されます。 3枚刃のエンドミルは、2枚刃、4枚刃中間の特長を併せ持っており、側面、溝加工両方に対応しています。
- Question 側面加工は、5軸制御マシニングセンタによる加工のように被削材に対して任意に工具姿勢を変化させることが可能な場合は、工具の突き出し量を最小限に抑えることが可能になります。 しかし、一般的に行われている同時3軸の切削加工では、工具の突き出し量が多くなったり、工具の一部とワーク面が接触するなどの可能性があり、対策が必要になります。 特に、工具とワークの干渉は、トラブルの原因になるため、どのように対応できるかを教えてください。 Answer 工具干渉が与える悪影響とは 刃径とシャンク径が同寸のエンドミルで深いキャビティなどの側面加工を行うと、工具やホルダーなど、切れ刃部以外の箇所がワークに接触する可能性があります。その結果、切削時に振動が発生するため、工具やワークの損傷につながります。
- [2023/2/16公開] Question 側面切削で加工面精度を改善するには? エンドミルで側面切削を行う際に、加工面粗度が粗かったり、直角が出ないなどで所定の加工面精度に仕上げるのが難しいのですが、どのような工具を選定しどのような方法で加工すれば良いのですか? Answer 加工精度が得られない原因 高剛性な超硬エンドミルであっても、切れ刃長さ、および首下長さ寸法が過度な場合は、切れ刃部の逃げやビビリが発生し、加工精度と工具寿命が低下します。切れ刃部の逃げとは、被削材を加工中に工具先端側がたわむ現象で、加工面は弓状となってしまいます。 別の原因としては、工具の保持剛性と振れ精度が低い場合や、切削条件が最適化されていないなどが考えられます。 ビビリ抑制の詳細は技術情報「エンドミルのビビリを抑制するポイント」をご参照ください。
- Question ラジアスエンドミルによる倣い加工のメリットは? 三次元形状の倣い加工に、ボールエンドミルではなくラジアスエンドミルを使用するという話を最近よく聞きます。ラジアスエンドミルを使うと具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。 Answer 切削条件の良化 ボールエンドミルの刃径は刃先Rの2倍ですが、ラジアスエンドミルの刃径は刃先Rの寸法に関係なく大きくすることが可能です。刃径が大きいと以下の点で切削条件が良化します。 刃径が大きいと工具剛性が高く、特に小径の場合たおれを小さく抑えることができ、安定した切削が可能です。また、実切削径が大きくなり速い切削速度で加工することが可能なため、加工面精度の向上や工具寿命の向上が見込めます。
- Question V溝カッターでの加工で、刃が欠けて困っている V溝カッターで加工をするとき、回転数を下げて加工してもすぐに先端が欠けて困っています。 Answer V溝カッターでは、実切削径で回転数を決定するのがポイントです 工具径で回転数を決定すると適正な切削速度より遅くなり、工具に無理な力がかかります。 実切削径で回転数を決定することで、そのような状態を回避します。 図1 V溝カッターの実切削径と回転数のポイントと計算方法
- Question 小径のエンドミルがすぐ折損してしまい困っている 微細形状加工に小径のエンドミルを使用していますが、チッピングや折損が起こりやすく困っています。どのように対策をすればよいでしょうか? Answer 振れ精度 小径のエンドミルは剛性が低いため折損しやすい工具ですが、その原因の第一は、工具自体の振れや保持具により発生した振れの影響によるものです。 折損を防止するには、振れ精度の管理を徹底することが必要ですが、焼ばめホルダのように保持精度が高い保持具を使用することが有効です。 切削速度を上げて切削特性を高める 一般的にエンドミル刃先の切削特性は、十分な切削速度がなければ発揮されません。小径のエンドミルは、回転速度を上げても切削速度がそれほど上がらず、特にボールエンドミルの場合、実切削部の工具径がかなり小さくなるため、刃先の切削特性が十分に発揮されない状態で使用されていることが多くあります。小径のエンドミルを使用する場合は、実切削速度を意識した対応が必要です。
- Question 突き出しが大きな場合の切削条件は? カタログに記載されている切削条件表はどの位の突き出しで使用することが前提になっているのでしょうか? また、突き出しを長くする場合には切削条件をどのように変更すればよいでしょうか? Answer 標準突き出し量 カタログに記載されている切削条件は、工具径の3倍程度(最高でも5倍程度)までの突き出し量を前提で適用することをお勧めします。(ロングシャンクなど突き出しを長く使用することを前提とした商品は除きます) 工具の剛性を保つためには突き出しをできるだけ短くして使用することが重要です。 突き出しが長い場合の切削条件 干渉防止などで突き出しを長くしなければならない場合にはビビリが発生しやすくなるため、フレを最小限に抑え、保持剛性の高い焼ばめホルダが有効です。 その上で標準切削条件に対して軸方向切り込み量を10~50%ほど少なくしてください。 それでもビビリが止まらない場合には回転数と送り速度を突き出し量に応じて10~40%ほど少なくしてください。
- Question エンドミルのヘリカル加工やトロコイド加工とは? エンドミル加工で、ヘリカル加工とかトロコイド加工などを目にしますが、どういった加工なのでしょうか? Answer エンドミルのヘリカル加工やトロコイド加工とは エンドミルで形状加工する時の、エンドミルの動き方(ツールパス)の1種類のことです。 同じ形状を加工するときでもエンドミルを動かす様々な方法があり、加工法によって加工時間や工具の寿命が異なる場合があります。 ヘリカル加工やトロコイド加工を含め、代表的な5つのエンドミルの加工方法をご紹介致します。
- Question 5軸制御のマシニングセンタを有効活用する為の工具選定方法と使用する上でのポイントを教えてください。 Answer 5軸制御マシニングセンタのメリット・デメリット 5軸制御マシニングセンタでは、3軸の加工では難しい形状、段取り替えを必要とする加工などを、高効率、かつ同一の段取りで切削加工が可能になります。その結果、工程の簡素化、治工具の省略、高精度化などの効果が期待できます。反面、NCプログラミングが複雑になったり、加工形状によっては工具の突き出しが大きくなるなどのデメリットが考えられ、これらの対応が必要になります。
- Question 浅切り込み、高送りを前提とした高速ミーリングのメリットを最大限発揮させるためにどのようなエンドミルを選定すればよいか教えてください。 Answer 短刃長・高精度エンドミルの使用 高速ミーリングでは、工具を高速回転で用いるので、できる限り短い刃長・R精度や振れ精度が高水準の工具をご使用ください。 焼ばめホルダと専用エンドミルの使用 高速ミーリングでは、保持剛性に優れている焼ばめホルダの使用が増えております。 焼ばめホルダ用エンドミルを使用し、工具・保持具の両面で最も適した製品を選定することが有効です。