最近流行している新商品には、たくさんのプラスチック射出成形品が使用されていますが、そのいずれもが過去に生産された樹脂部品とは一味違っていて、特殊な形状や新しい樹脂を使用しており、過去の金型生産技術経験や射出成形加工経験では、対応が困難な事例が増加しています。
新しいプラスチック射出成形品の量産生産技術を開発するためには、金型の開発は避けて通れない関門です。
試作金型を起工して、技術上の問題点を試行錯誤しながら、新しい知見を見出していかねばなりません。
試作金型を起工する前に、プラスチック射出成形CAEを上手に利用すると、実験の効率化を図ることが可能です。
プラスチック射出成形CAEは、一般に以下のプログラムから構成されています。
(1)形状モデリングプログラム
解析用の成形品の3次元データです。
(2)自動メッシュプログラム
有限要素法という計算を実行させるために、解析用3次元データ上に三角形のメッシュ(網目)を自動で生成させるプログラムです。
(3)樹脂データベース
樹脂のpvtデータ(圧力−比体積−温度データ)や樹脂の物性値が蓄積されているデータベースです。
新しい樹脂を解析したい場合には樹脂データベースを構築しなければなりません。
(4)解析条件入力プログラム
金型温度、充填温度等の解析の前提条件を入力するプログラムです。
(5)充填解析プログラム
溶融した樹脂が金型内部へ充填する状況を解析するプログラムです。
最終充填位置やウエルドラインの位置を予測できます。
解析結果を参考にしながらガスベントの位置を検討できます。
(6)保圧・冷却解析プログラム
充填完了から冷却完了までの状況を予測する解析プログラムです。
成形品の温度分布がわかりますので、ひけの発生状況を推測することができます。
(7)金型冷却解析
金型の温度分布を解析します。
金型の温度の不均一さを検討することができます。
(8)繊維配向解析
ガラス繊維等が入った樹脂の繊維配向状況を解析します。
(9)収縮・そり変形解析
金型から成形品を取り出した後の変形や収縮を解析します。
そり・変形の原因を推測したり、成形品の形状変更がどの程度、そり・変形の改善に寄与できる可能性があるかを検討することができます。