射出成形ではキャビティとコアの冷却が、生産性、生産コストそして品質安定に大きな影響を与えます。それは百も承知であっても、冷却水孔を設けるスペースがないからしかたがない、うまい冷却構造が従来の方法だと適用できないから仕方がない・・・。こんな悩みに解決策を提供できるのがミスミの「スポット冷却パイプ」です。
冷却水や加圧スチーム、冷却油などの流体を冷媒として金型内を循環させる温度調節機構は、射出成形金型の温度調節構造の主流です。流体を循環させるためには型板やキャビティ、コアに孔を機械加工します。機械による孔加工は、ツイストドリルやエンドミルで加工することがほとんどですから、孔は直線孔しか通常は加工できません、曲がった曲線の孔を機械加工することは極めてアクロバティックな方法しか不可能です。
そうすると、直線孔を縦横に組み合わせた冷却回路を作り、冷媒を循環させる流路を限られた金型のスペース内に設定しなければならず配置には工夫が要求されます。さらに都合が悪いことに、金型にはエジェクタピン穴やスライドコア、アンギュラピンなどの取り付け孔が無数に開いており、冷却水孔はこれらと干渉して破れないように配置しないとなりません。金型設計技術者の皆さん、ご苦労様です。毎回、目に見えないところで智恵を絞って検討なされているからこそ、日本の金型は温度管理が素晴らしいと言われていることを私たちは知っています。
ところで、スポット冷却パイプの特徴ですが、狭いスペースでも縦孔や横孔のみの冷却水孔加工だけで、直接に噴流冷却構造を設定できることが最大の長所です。冷却孔は開いているだけではほとんど冷却の効果は得られず気休めになりがちですが、噴流による強制循環方式だと冷却効果は大きく改善されて効きが良くなります。
スポット冷却パイプにはジョイント部と冷却パイプが一体で組み合わされていますから面倒な組み立ては要りません。また、固定ジョイント式と回転ジョイント式の2パターンがございますので、用途によって使い分けてください。
使用環境は、冷却媒体温度は180℃まで使用が可能です。
具体的に既にお使いいただいている事例には次のような事例がございます。
- (1)
- 背の高い細いコアの中を冷却する。
- (2)
- 狭いピッチの多数個取り金型でキャビティ、コアをそれぞれ冷却する。
- (3)
- スライドコアの中を冷却する。
- (4)
- 成形品の一部が厚肉部があり、そこだけを部分的に強制冷却する。