前回紹介したプラスチック射出成形金型が、溶融樹脂から受け取る熱量について、事例で計算をしてみましょう。
【 問題 】
ABS樹脂を成形材料とするプラスチック射出成形金型において、以下のような前提条件下、金型が金型内に射出された溶融樹脂から受け取る熱量はいくらになるか?
- ランナー方式
- :コールドランナー
- 成形品重量
- :25gf=0.025kgf
- 取り個数
- :2個取り
- ランナー重量
- :15gf=0.015kgf
- ノズル温度
- :232℃
- 成形品離型時温度
- :86℃
- 成形サイクル
- :16sec
【 計算例 】
まず、ABS樹脂は、非晶性樹脂であることから、受熱量計算式は、平均比熱を用いる(1)式を採用する。
次いで、ABS樹脂の平均比熱CRは、樹脂データより0.40kcal/kgfを得る。
そして、計算式(1)に各データを代入し計算する。
- QPL
- =3600×W×(t2-t1)×CR/T…(1)
- =3600×(0.025×2+0.015)×(232-86)×0.4/15
- =911(kcal/h)
したがって、金型が溶融樹脂から受け取る熱量QPLは、911(kcal/h)となると考えられる。
非晶性樹脂の平均比熱は、各樹脂メーカーの樹脂データを入手して確認し、計算に用いることができます。