プラスチック射出成形における熱量の収支計算を行うためには、最初に金型が受け取る熱量を算定することから始めます。
金型が射出された溶融樹脂から受け取る熱量は、技術計算によってある程度正確に算定ができます。
熱量算定には、以下の基礎データを準備しなければなりません。
熱の伝わり方には次の3つのパターンがあります。
- (1)
- プラスチック材料平均比熱 CR(specific heat, 単位kcal/kg・℃)
比熱は、単位質量の物質の温度を1℃上げるのに必要な熱量のこと。
非晶性樹脂の場合に使用します。 - (2)
- プラスチック材料のエンタルピー E(enthalpy, 単位kcal/kgf)
エンタルピーは、流体の状態量の一つで内部エネルギーと外部に仕事をする能力の和のこと。
E1:射出時の樹脂温度におけるエンタルピー
E2:成形品離型時の樹脂温度におけるエンタルピー
結晶性樹脂の場合に使用します。 - (3)
- 成形品の重量 wc(kgf)
- (4)
- ランナーの重量 wr(kgf)
- (5)
- プラスチック材料の樹脂温度 t1(℃)
- (6)
- 成形品離型温度 t2(℃)
- (7)
- 成形サイクル T(s)
これらのデータを準備できたならば、金型が1サイクルで受け取る熱量Q PLを計算することができます。
非晶性樹脂の場合には【式1】で計算をします。
【式1】 単位:kcal/h
QPL=3600・W・(t2-t1)・CR/T
結晶性樹脂の場合には【式2】で計算をします。
【式2】
QPL=3600・W・(E1-E2)/T
さらにホットランナー金型のように別の熱源から熱を受ける場合には、その熱量も加算する必要があります。