金型の冷却に水を使用する場合には、型板やキャビティの内面に冷却水を循環させるための水穴を加工します。
水穴の表面は、ガンドリルやエンドミルで機械加工された面になっていますが、成形加工をした後は水穴の中に残った水分が錆びたり、水垢が表面に付着してしまいます。
水穴の表面状態が金属表面ではなく錆びたり水垢付着を起こしますと、伝熱効率が変化して、冷却効率が悪化します。
物理的な熱関係のデータは下記のように変化することが知られています。
熱通過率K
(kcal/m2・h・℃)
S50C(機械構造用炭素鋼) 1022
水垢 123
S50Cニッケルめっき 1019
ステンレス鋼 736
このデータから考えられることは、水垢が付着することで熱通過率は約1/10にも大幅に悪化するということです。したがって、金型の冷却効率を維持するためには水垢の除去が重要で、金型表面温度の変化によって成形収縮率や外観の転写状況は、大きく左右されることになります。
精密な金型の冷却効率維持を必要とする場合には、ステンレス系の防錆鋼材を採用する方法や、冷却水穴表面にニッケルめっきを施すことが効果的になります。
また、ニッケル合金電鋳によるキャビティ製作も効果的な対策になります。
成形サイクルを短縮するための冷却効率を高める必要がある場合には、いかに冷却水穴の表面状態が重要であるかがご理解いただけたかと思います。
- ※引用文献
- :『射出成形金型』P311〜312(三谷景造)