プラスチック射出成形金型の部品は、部品どうしの接触や摩擦、さらにはプラスチック材料に含まれているガラス繊維等によって摩耗します。
摩耗の状態が、許容される範囲を超えてしまった場合には、金型がきちんと作動しなかったり、金型が破損したり、成形品の形状が変形したりする不具合が発生してしまいます。
金型の摩耗には、正常摩耗と異常摩耗の2種類に分類されます。
正常摩耗は、接触したり摺動したりする部品どうしが、徐々に磨り減ってゆく際に発生する摩耗のことです。摩耗をしにくくすることは技術的に可能ですが、摩耗を根本的に防止するためには無接触にしない限り極めて困難です。
正常摩耗は、初期摩耗と定常摩耗に分類されます。
定常摩耗が管理された予定寸法に到達した場合に新しい部品と交換するようにすれば金型の故障や不具合を未然に防止することができます。
一方、異常摩耗は、正常摩耗ではない摩耗のことです。異常摩耗には、代表的に5種類の分類があります。
1. アブレシブ摩耗(abrasive wear)
摩耗する部材間に硬度の差がある場合に生じやすい摩耗の形態です。
硬い方の材料が柔らかい材料に食い込み、スクラッチを発生し、摩耗を引き起こします。
2. 凝着摩耗(adhesive wear)
部材の凸部どうしがぶつかりあい、一部分が凝着を起こし、凝着部が成長した結果、それが移着分子となりやがて脱落して摩耗粉になる摩耗の形態です。
3. 疲労摩耗(fatigue wear)
負荷と除荷の繰り返し(作動と停止の繰り返し)により金属疲労が発生し、摩耗する形態です。
4. 微動摩耗(fretting)
はめあい部分の表面に微細なピッチング状の摩耗を生ずる形態です。
5. 腐食摩耗(corrosion)
腐食性の環境下において、金属間に電位差が生じ、それによって摺動部が欠落し、さらに摩耗が加わって急速に損傷が起きる摩耗の形態です。