スライドプッシャとは、一定の押し付け力を発生する用途に用いられ、スプリングで発生する力によりスライドバーを前後に移動可能とする機械要素部品である。
構造・用途・使用手順
構造
図1にスライドプッシャの外観を示す。
図1．スライドプッシャの外観
スライドバーがスプリングによって押し出され、図1の矢印方向に移動する構造となっている。スプリングはボディ内に収納されおり、ノブに力を加えることでスライドバーがスプリング力に打ち勝って同方向に移動する。スライドバーの先端が変更可能な構造となっており、被固定部品によって固定構造を変更することが出来る。またボディには加工されたねじ穴が開いており、簡易的にスライドプッシャを取り付けることが出来る。
用途
スライドバーに加わるスプリング力により、部品を目的の位置に固定することができる。また簡易的にスライドバーの位置を変更することが出来るため、仕様の範囲内で押し付ける力を変化させることが可能である。これらを用いて小型部品の着脱を行う機械要素部品として使用される。
使用事例
図2にスライドプッシャの使用事例を示す。
図2．スライドプッシャの使用事例
固定台の凹部に被固定部品をはめ込んで固定を行う。この被固定部品を押し付けるためにスライドプッシャの移動と力の機能を利用している。押しつけ力はスライドプッシャと固定台の取り付け位置で変更が可能となる。 ノブを引っ張ることで被固定部品を固定部から開放できる。また、ノブをフリーの状態にした場合、スライドプッシャ―内のばね作用で被固定部品を再度固定することが出来る。
選定のポイント
諸元値の選定
スライドプッシャの選定において必要な諸元値は「ストローク」と「荷重」である。その参考値を図3に示す。
図3．スライドプッシャの参考値
| 型式 | 荷重（N） | ||
|---|---|---|---|
| Type | スプリング | min. | max. |
| SLDP | S（軽荷重） | 1.5 | 6.4 |
| H（重荷重） | 4.9 | 14.7 | |
固定部品の選定
スライドプッシャの固定部の形状は被固定部品と接触するため構造に合わせて決める。スライドバーの先端はタップ穴と位置決め用のピンが加工されており、これらを用いて固定部の変更を行う。
参考
図4は被固定部品をスライドプッシャで固定台に押し付ける力をコントロールしたい場合の事例である。
図4．スライドプッシャ参考事例
例えば、被固定部品が軟質材の場合、強い力で押した際に被固定部品が破損する可能性があるため、押し付け力を軽減しなければならない。その際にスライドプッシャが、有効に使用できる事例を示している。ただ図2のようにスライドプッシャを移動台に固定することで被固定部品の大きさが変化した際に、移動台の位置を変更するだけで固定力の調整を行うこともできる。移動台はモーターにより、移動を可能としている。
