コンベヤローラのグラビティタイプとは、部品の搬送に用いられ、転がる斜面に並べたローラにより対象物を移動させる機械要素部品である。
構造・用途・使用事例
構造
- グラビティタイプは、位置のエネルギーを速度のエネルギーに変える重力作用で部品を搬送するコンベヤローラである。
- コンベヤ用ローラ、コンベヤガイドを用いてローラコンベヤを構成する。
- 使用される材質はスチール製やステンレス製など用途によって様々な種類がある。
- その外観を図1に示しており、この上面を被搬送部品が転がる。ローラによる転がり摩擦で、その運動エネルギーロスの少ない搬送方式が特徴である。
図1.グラビティタイプのローラコンベヤ
用途
- 転がる斜面に並べたローラにより対象物を移動させる。
- 組み立て機械に部品など搬送物を供給する搬送機器として用いる。
- 搬送物の重要や長さによってコロコンローラやコンベヤ用ローラなど使い分けをする。
使用事例
グラビティタイプのコンベヤは、重力を利用した搬送方法であるため、コンベヤの傾斜がそのポイントとなる。図2に傾斜を利用した現場の使用事例を示す。
図2.トラックヤードにおけるトラックへの荷物の積みこみ
図3.プロセス装置間の組み立て部品の搬送
図4.組み立てライン部品供給の搬送
選定のポイント
選定のポイントは下記3点となる。
搬送物に合わせた選定
グラビティタイプを選定するとき、搬送物に合わせたコンベヤ用ローラの選定を行わなければならない。その搬送物の仕様とコンベヤ用ローラの選定の諸元値のあるコンベヤメーカーの事例は次の通りである。コンベヤメーカーごとにその選定法は異なるので、個別のメーカーのカタログなどを参考いただきたい。
表1.搬送物とコンベヤ用ローラの選定項目
項目 | グラビティコンベヤ仕様 | ||
---|---|---|---|
ローラ幅*2 | 直線 | ローラ幅は、搬送物の幅に余裕幅を加えた寸法とする。 ローラ幅≧搬送物幅(W)+50 |
|
カーブ | ストレート ローラ |
ローラ幅は、搬送物幅に余裕幅とカーブにおける余裕幅を加えた寸法とする。 ローラ幅≧搬送物幅(W)+50+0.15 × L |
|
テーパ ローラ |
ローラ幅は、搬送物幅に余裕幅を加えた寸法とする。 ローラ幅≧搬送物幅(W)+50 |
||
ローラピッチ | 硬い材質 | 搬送物を4本のローラで支える。 ローラピッチ≒搬送物長さ(L)/5 |
|
軟い材質 | 搬送物を6本のローラで支える。 ローラピッチ≒搬送物長さ(L)/7 |
||
ローラ径*1 | 硬い材質 | 搬送物重量を2本のローラで支える重量 R=搬送物重量/2 |
|
軟い材質 | 搬送物重量を6本のローラで支える重量 R=搬送物重量/6 |
||
ローラ材質 | プラスチック材または金属から選択する。材質によって負荷荷重が異なる。金属材の方がその負荷荷重は大きい。 | ||
ローラ長さ*3 | ローラ長さは、フレームサイズで指定できる。ローラ材質が金属の場合、フレームサイズ1,000mm以下、プラスチックの場合、1,300mm以下で指定可能となる。使用する際は100mmピッチで使用する。 |
注釈
- *1
- ローラ一本当たりの荷重Rをローラ径毎に異なる支持荷重以下とするようローラ径を選定する。支持荷重は、カタログに示された当該ローラに使用されているべアリングの動定格荷重から寿命を考慮して決定する。
- *2
- ローラ幅はローラ回転軸方向の長さ
- *3
- ローラ長さはローラ幅に直角方向の長さ
ローラ幅を不必要に長くした場合、ローラの慣性モーメントが大となり、転がりにくいグラビティローラコンベヤとなるので、不必要に長くしないこと。
搬送物をグラビティローラに積載する際の方法によって、そのローラに加える負荷を変える。この係数をローラで支える重量(R)に掛けた数字をローラの負荷重量とする。この係数を表2に示す。
表2.積み込み法の係数表
積み込み法 | 係数 |
---|---|
搬送のみ | 1 |
ゆっくり手で下ろす | 1.5 |
フォークリフト | 1.5~2 |
ホイスト、クレーン | 2~3 |
1m程度落とす | 3 |
図5.グラビティコンべヤ選定作業における仕様
コンベヤガイドの選定
コンベヤガイドは図6に示す様に搬送物が外力、搬送物とコンベヤローラのすべりなどで搬送方向がローラコンベヤの軸方向の成分が発生した場合、ローラコンベヤから搬送物が落下する危険がある。この時落下を防止する目的で、コンベヤガイドを取りつける。コンベヤガイドは、コンベヤガイド取り付け具とコンベヤ用ワークガイドから成り、コンベヤのフレームに取り付けて使用する。
図6.コンベヤガイドの取付法
グラビティタイプのコンベヤ設置法
①スタンドの取り付け
グラビティタイプのコンベヤローラはフレームに取り付けられた状態で供給されることが多い。このフレームにスタンドを取付けて使用することで、高さ調整、自走勾配の設定が容易に行うことが出来る。取り付ける際は、フレーム強度を考慮して取り付けを行わなければならない。
ストレートコンベヤの場合は、図7に示す様に1,500~2,000mm間隔に1脚、カーブコンベヤの場合は、45°以上に1脚を設置する。
搬送物の重量を1m当たりの重量に換算して、型式・スタンドを選定する。
図7.スタンドの取付け
②自走勾配の選定
グラビティタイプのローラコンベヤを傾斜させれば搬送物は自重によって動き始める。この時の傾斜を自走勾配という。
自走勾配の値は、搬送物の重量、ローラとの接触する底面状態、湿度、温度により、ローラコンベヤの回転摩擦の値が変わるため、選定を行う際は目安として図8のグラフを記載する。
またローラに使用しているベアリングの種類によってこの角度は変わってくる。
図8.自走勾配の選定の目安
参考
グラビティコンベヤの力学
グラビティコンベヤを用いた搬送は重力を用いる関係上その傾斜が搬送動作を引き起こす源であるが、搬送が困難な条件が存在する。ユーザーはこの現象を理解して使用しなければならない。この理解には幾何学を用いた力学による説明になる。図9を用いて、理解を容易化するためローラ1本と搬送物1個の場合についてその力学を説明する。
ローラが回転する条件は、斜面の角度(α)が転がり摩擦係数と転がり摩擦半径で示される数字と搬送物、ローラ回転部の質量の関係が、計算結果の通り示される。
図9.ローラが回転する傾斜角の条件
- m1
- :ローラ回転部質量(kg)
- m2
- :搬送物質量(kg)
- r1
- :ローラ半径(m)
- r0
- :ローラ転がり摩擦半径(m)
- µ
- :ローラ転がり摩擦係数
- α
- :斜面角度
運動方程式(搬送物とローラの間で滑りが無いと仮定する)
T-TR=JΘ"------①
- T
- :トルク(Nm)
- TR
- :摩擦トルク(Nm)
- J
- :慣性モーメント(kgm2)
- Θ
- :角度(rad)
T=m2gsinα × r1
TR=(m1gcosα+m2gcosα) × µ × r0
J=(1/2)m2r12
上記の運動方程式を用いて、ローラが回転するための条件を算出する。
①式に代入して
m2gsinα × r1-(m1gcosα+m2gcosα) × µ × r0=(1/2)m2r12Θ"
Θ"=m2gsinα × r1-(m1gcosα+m2gcosα) × µ × r0)/(1/2)m2r12
Θ'=(m2gsinα × r1-(m1gcosα+m2gcosα) × µ × r0)/(1/2)m2r12)t
Θ=(1/2)(m2gsinα × r1-(m1gcosα+m2gcosα) × µ × r0)/(1/2)m2r12)t2
従って、ローラが回転する条件は、
(1/2)(m2gsinα × r1-(m1gcosα+m2gcosα) × µ × r0)>0となる。
m2gsinα × r1>(m1gcosα+m2gcos) × µ × r0)α
sinα/cosα>((m1g+m2g) × µ × r0)/m2g
tanα>((m1g+m2g) × µ × r0)/m2g