ウォームギアとは、2本の回転軸間で一方の軸に固定した螺旋形状のウォームと他方の軸に固定したウォームホイールまたはハスバ歯車を噛み合わせて回転力を伝える用途に用いる機械要素部品である。
構造・用途
構造
図1のような、軸上に「歯」と呼ばれる凸部を巻きつけて回転をする。
図1.ウォームギアの構造
ウォームギアを使用する際は相手側の歯車となるウォームホイールと噛み合うように、要目表で整合性を確認して使用する。減速比はウォームホイールの歯数をウォームの条数で割った値となる。
特徴
ウォームギアの機構部に要求される体積が小さい場所で大きな減速を得ることが出来る減速機である。またウォームギア側からのみの回転を行い、逆回転はしない。
選定のポイント
選定のポイントは下記2点となる。
諸元値の減速比、伝達トルク、芯間距離の選定
噛み合うウォームとウォームホイールのデータを表1に示す。モジュール(歯のサイズ)と歯数、条数によって、減速比が決まる。ウォームとウォームホイールの基準ピッチ円直径より芯間距離を算出することが重要となる。
表1.ウォームの要目表
また選定ポイントの諸元値は次のように選定する。
表2.ウォームギアの選定ポイント項目
項目 | 内容 |
---|---|
減速比 | ウォームホイールの歯数/ウォームの条数の数字である。 ウォームホイールの歯数を50枚、ウォームギアの乗数を1条とすれば減速比50(=50/1)の歯車減速機となる。 |
伝達トルク | ウォームホイールに示される許容トルク値以下で使用すればよい。 伝達動力を「ワット」で表した場合、この単位はNm/sとなる。 この数字を回転角速度で割れば伝達トルクが求められる。 |
芯間距離 | ウォームホイールの「噛合中心距離」に示された数字である。計算方法は下記となる。 噛合中心距離=(ウォームギア基準ピッチ円(d)+ウォームホイール基準ピッチ円直径(d))/2 |
潤滑油の選定
潤滑油の目的は次の4点があり、使用条件によってその潤滑法を選定しなければならない。
- すべり摩擦の低下
- 温度上昇を防ぐ
- 錆の防止
- 異物の除去
潤滑油の給油法は歯面の滑り速度によって次のように決定する。
表3.給油法の種類と特徴
給油法 | 特徴 | 滑り速度*1 |
---|---|---|
グリース潤滑 | 密封する噛み合い歯面を塗布したグリースで潤滑する。 グリース注入空間は狭い方がその封入効果は大きい。 小トルク、低速回転で使用する。 |
5m/s |
はねかけ潤滑 | 密封容器に潤滑油を封入し、 歯車の移動によって潤滑油が噛み合う歯面に注入される構造とする。 中トルク、中~高速回転で使用する。 |
5~10m/s |
強制潤滑法 | 重力またはポンプを用いて潤滑油を噛み合い歯面に注入する方法で重力落下方式、強制方式がある。 大トルク、高速回転で使用する。 |
10m/s以上 |
注釈
- *1
- 滑り速度とはウォームギアのピッチ円径によるその周長に回転数を乗じた数字とする。
図3に示すとおり、はねかけ潤滑の場合は密封容器で使用し、劣化に対して交換が可能になるような構造となっている。
図2.密封タイプのウォームギアとウォームホイールの潤滑
ウォームと噛み合うウォームホイールの要目表
ウォームと噛み合うウォームホイールの要目法を表5に示す。両歯車が噛み合うには歯形形状と共に両歯車の芯間距離をきめられた数字とする必要がある。歯形形状は歯車を製造する加工条件で決まり、芯間距離は設計の際の組み立て条件となる。
表4.ウォームホイールの要目表
条件 | 項目 | 計算式 | 記号 | ウォームギア | ウォームホイール |
---|---|---|---|---|---|
設定条件 | 歯の加工情報 | - | - | 歯直角 | |
モジュール (歯のサイズ) |
- | m | 1 | ||
歯の形 (圧力角) |
- | an | 20° | ||
条数 (移動量) |
- | Z1 | 2条 | - | |
歯数 | - | Z2 | - | 100 | |
基準ピッチ円直径 | - | d1 | φ38.1 | - | |
設定条件より算出 | 駆動従動軸関係 | - | - | 段違い90° | |
基準ピッチ円直径 | Z2 × m/cos(y) | d2 | - | φ99.858 | |
減速比 | Z2/Z1 | d1 | 50 | ||
進み角 (移動量) |
tan-1(m × Z1/d1) | y | 3.0049° | ||
芯間距離 | (d1+d2)/2 | L | 68.979 |