絞り製品の加工では、【図1】に示すような縁の平らな製品をイメージしますが、実際には、【図2】に示すように凹凸ができます。この凹凸の高い部分を、耳と呼んでいます。普通は4カ所に耳が発生します。低い部分は材料の圧延方向の45°に位置する部分です。
フランジのある絞り製品では【図3】の示すようにフランジは円形にならずに、四角に近い形状になります。柿の実の形に似ています。
耳の発生は、材料のr値が影響します。r値は材料の引っ張り試験片を引っ張り試験機で引っ張り、材料の伸びが20%になったときの、試験片の板厚と幅の比から求められるものです。ここで、試験片の取り方によって結果が変わります。材料の圧延方向と直角、平行及び45°の関係です。この方向性の違いが耳の発生となります。同じ材料でも方向によってひずみが変化することを面内異方性と呼んでいます。耳の大きい材料を異方性が大きいなどと呼ぶこともあります。r値は大きい方が深絞り性はよくなります。
材料には異方性が必ずあるので、普通の絞りでは耳の発生の影響が必ずあると考えます。対策としては、縁をきれいに仕上げるためにトリミングをおこないます。また、工程数の多い絞りでは、耳の発生によって位置決めがやりにくいことがあります。このようなときには、中間工程でトリミングをして形状を整えることもおこないます。
【図4】は、局部的に発生する耳です。これは異方性の影響ではなく、金型の異常であることが多いです。つまり、しわ押さえが均一でなく偏っているときに押さえが強い部分が伸びて耳となることがあります。金型以外では、ブランクのバリが部分的に大きくでているとき、そのバリ部が抵抗となって耳発生原因となることもあります。