絞り加工で【図1】に示すように、側壁部分にリング状のマークができることがあります。このマークは「ショックマーク」と呼ばれることもあります。
初絞りのさいにできるリングマークは、ダイRが小さい状態で絞ったときに発生します。絞り初期に材料が伸ばされてできるものです。
絞り行程ではパンチ肩付近で最も大きな力が働くために、その部分の板厚が減少します。その状態を示したものが【図2】です。板厚減少部分は元の板厚より薄くなります。
絞り加工では、絞り加工限界のために、目的の形状を作るのに数工程かかることが普通といえるでしょう。
数工程で加工すると、各工程でできるパンチ肩付近の板厚減少部分は【図3】に示すように、絞り径の減少に伴って側壁部分に移動します。その部分がリング状に現れるのです。
このリングマークの対策としては、パンチ、ダイのRの大きさが関係します。小さいときに発生するので、Rを大きくすることが対策のひとつです。再絞り工程では、工程間のRバランスを取ることも大切です。このようにしてもリングマークは完全にはなくすことはできません。完全になくすためには側壁の材料をしごいて(アイヨニング)、薄くし、均一な側壁面を作ります。通常の絞り加工の多くは、最終工程付近でしごきと絞りを併用して(しごき絞りと呼ぶ)きれいな側壁を作ることと、寸法精度を高めることを行っています。
そのため、側壁の板厚は元の素材板厚より薄くなります。絞り製品の寸法がしごき絞りに対応できる状態にないと、リングマークを消すことは難しいと考えた方がよいでしょう。しごき量は素材板厚の30%位までが一回で加工できる限度の目安です。通常は10%位のしごき量を使います。