中国は、2023年時点で約18兆ドルの名目GDPをもち、アメリカの約26兆ドルに次ぐ規模になるなど、世界第2位の経済大国として、年々影響力を拡大しています。とくに製造業においては、付加価値額が世界の約30%を占める世界第1位の製造大国へと成長しました。こうした中国製造業の活況はMRO市場(間接材市場: Maintenance Repair and Operations)ならびに間接材自販機市場にも反映され、市場が急速に拡大することが予測されます。
今回は、このような中国における間接材自販機市場の概況をお伝えするとともに、自販機を通じて間接材供給を展開しているミスミ中国の動きについてレポートします。
製造業DXと中国
拡大する中国の存在感
ドイツ政府が2011年に「インダストリー4.0」を提唱して以来、製造業の効率化、生産性向上、競争力強化を目指す試みが世界中で進んでいます。インダストリー4.0のアイディアはブラッシュアップされて、近年は「製造業DX」という言葉で語られています。
現在、製造業DXの一環として注目されているのがスマート工場です。スマート工場を中心としたエコシステムを構築し、既存のバリューチェーンの改革を目指すもので、たとえば、原材料の調達から供給まで、AIがデータを精緻にトレーサビリティすることによって、多品種少量生産が原則だったオーダーメイド製品についても大量生産が可能となります。
こうした製造業の変革を現実のものとしつつあるのが、今や製造強国となった中国を筆頭としたアジア勢です。中国はもともと、先進諸国からノウハウを獲得する側でしたが、中国政府は「中国製造2025」を2015年に発表。結果として、製造業の効率化、競争力強化を実現する「プラットフォーム」メーカーへと変貌しています。
中国の間接材用自販機市場
このように、中国ではモノづくりのデジタル化が急速に進展しています。中国政府は、「第14次五ヵ年計画」(2021年)のなかで、MROを含めた産業のデジタル構築を進める政策を打ち出してきました。こうした政策の成果もあってか、スマートキャビネットによる在庫管理といった製造業MROの開始とともに堅調な伸びを示しています。結果として、中国の製造業MRO市場は20兆円以上でグローバル最大のマーケットに成長するまでにいたりました。
現地に根づくミスミ中国
ミスミ中国の概要
ミスミは、中国に現地法人を2003年に設立しました。同社の主力商品である間接材供給サービス「PASSデジタルソリューション」(以下、PASS)は、工場内に自販機を設置し、間接材の発注から納品、支払いにいたるまでのプロセスの簡素化を可能にします。
PASSで活用される自販機は8種類あり、ロッカー型、ロータリー型、スクリュー型など、間接材の大きさに合わせた自販機を用意。間接材利用の窓口となる「ホストキャビネット」に最大12台接続可能となっています。
また、取扱間接材を「低頻度20万種」「中頻度5000種」「高頻度50種」に分類し、低頻度品は発注から24時間で出荷、高頻度品は工場設置の自販機での現場供給を実現しています。
■ミスミ中国 自販機の例:ロッカー型

■ミスミ中国 自販機の例:(刃物専用)ロータリー 中低頻度使用品向け

■ミスミ中国 自販機の例:(刃物専用)スクリュー 高頻度で使用量が多い ボックスごとの取り出し

PASSデジタルソリューションの効果
PASSのメリットは、在庫管理の簡素化、業務負担の軽減、備品管理の精度向上、そして突発的な需要への迅速対応です。これらの効果について、実際に導入した顧客から高い評価の声が寄せられています。
まず、発注・納品・棚卸の管理が不要になり、業務負担が大幅に軽減される点については、「購入プロセスが以前よりシンプルになった」、「使用頻度の高い商品を便利に手に入れられるようになった」、「倉庫が整理されたことで無駄な滞留在庫がなくなった」という評価が聞かれました。
また備品管理の精度向上についても、「現場作業者は顔認証を利用して商品を取り出せるため、管理者が備品を配布する必要がなくなった」という声が聞かれるなど、データで従業員の使用履歴を把握できることで管理の効率が上がったとの報告があります。
まとめ
中国は、製造強国としての実力と2010年代後半から推進するDXの取り組みを背景に、MRO市場においても間接材自販機を含むデジタルプラットフォームの提供を積極的に進めています。これらのプラットフォームは、効率的な在庫管理や供給プロセスの最適化を可能にし、大手企業を中心に導入が進んでいます。一方で、中小企業への普及はまだ限定的であり、完全な浸透には時間がかかると予想されます。
しかし、導入企業からは、生産性向上やコスト削減といった効果を高く評価する声が多く、今後の普及拡大への期待が高まっています。さらに中国国内のみならず、これらのデジタルソリューションは海外市場でも影響力を強めており、グローバルなMRO市場における中国の存在感が一層際立つものと予想されます。