いままで、金属体の腐蝕の形態やその原因、対処法などについて述べてきましたが、これらの腐食を防止する方法について考えてみましょう。
腐食の基本は、(1)腐食しない金属体を使う、(2)腐食環境を改善することです。これを具体的にいいますと、 (1)金属を合金化などして電気化学的に貴な金属にしたり、めっきやコーティングを施すなどして腐食に強い金属体にすることです。 (2)は、地下埋設物であれば、腐食性の強い土壌を中和剤によって改良したり、水中にインヒビター(腐食抑制剤)などを投入して、腐食環境を腐食しない環境に変化させることです。 また、(1)に属しますが、装置や機器の設計や施工に、腐食の問題を導入して、すき間腐食、濃淡電池、流体流れの不均一、局部加熱などをなくして、これらによる腐食をなくする対策が必要です。 巨大な船舶、湾岸施設、化学装置などの防食法として広く用いられている方法は、電気化学的防食法です。これは一般に電気防食法と呼ばれていますが、カソード防食法とアノード防食法が行われています。 |
(1)カソード防食法
腐食性の強い海水に常時浸っている船舶は、銅合金であるスクリューと船体である鋼板との間に電池が構成され、電気化学的に卑である鋼板が腐食されます。昔からこれを防ぐために、船尾に亜鉛のインゴットを設置しました。これは鋼板が溶解する代わりに固定した亜鉛が犠牲的に溶けて腐食を防ぎました。これは、屋根などに用いる亜鉛めっき鋼板の防食原理と同じです。この場合、亜鉛を犠牲陽極と呼んでいます。 カソード防食法には、2つの方法があります。目的物をカソード分極するための電源を外部の直流電源から供給するか、目的物より卑な金属との接続に求めるかです。亜鉛インゴットの例は後者で、この方法は、流電陽極方式または犠牲陽極方式と呼ばれ、前者を外部電源方式または通電方式と呼ばれています。 1)犠牲陽極方式は、犠牲陽極として、亜鉛、マグネシウム、アルミニウムなどがありますが、アルミニウムは淡水中では鋼よりも貴になりがちなので使えず、海水中では不動態皮膜が破壊されるので卑金属として使用できます。 2)外部電源方式は、金属から環境へ流れ出る腐食電流に打ち勝つだけの電流を、交流を整流して供給し、対極として黒鉛、フェライトなどの不溶性陽極を用います。 |