フランジのない円筒絞りで、絞り終わりの部分でしわが発生することがあります。このような形のしわを口辺しわと呼びます。【図1】に示すようなイメージです。絞り加工ではしわが発生すると、そのしわを直すことはできません。どのような状態にあってもしわが出ないように注意が必要です。
このしわの発生状態を示したものが、【図2】です。
【図2】(a)のように、絞り途中でフランジにしわ押さえ力が働いている間は、しわの発生はありませんが、【図2】(b)のように、フランジがしわ押さえから外れたとたんに、しわが発生するものです。この発生原因はダイRの大きさが関係します。ダイRが大きすぎることが原因です。ダイRは絞り材料板厚の4倍〜20倍の範囲が適正範囲と言われています。この適正範囲の大きい付近、または越えているときに発生します。
対策は、ダイRを小さくすることです。絞り加工ではダイR部分で曲げられながら、絞りダイの中に形を変えていきます。したがって、ダイRは大きい方が変形抵抗が小さくなり、トラブルが少なくよいのですが、絞り終わりに問題を起こします。これが口辺しわです。同じ大きさのブランク径であれば、材料板厚が薄い方がしわの発生する確率が高くなります。このブランク径と材料板厚の関係を「相対板厚」といいます。材料板厚をブランク直径で割り、百分率で表したものです。この数値が小さいほど、しわの発生が起きやすくなります。