L曲げなどの押さえ曲げの加工では、曲げ後にダイから製品が離れるときに変形が起こることがあります。【図1】で説明します。
加工される材料は、ストリッパで押さえられて加工されます。このときに、加工された製品がダイに食いついてしまう対策として、ノックアウトで外すように設計することが多いですが、まだ、ストリッパで材料を押さえているうちにノックアウトが働いて、曲げた製品を押上て変形させてしまうものです。
これは、金型設計を下死点の状態で作図しているときに起きるミスです。戻り行程への配慮が欠けたためのものです。
ノックアウトの動作タイミングを遅らせる工夫が必要だったのですが、それが配慮されていなかったことが原因です。対策の例を示します。
【図2】はパンチのバックアップヒールを利用して、ノックアウトを先下げしてタイミングを遅らせる方法です。よけいな部品が必要なくシンプルな方法ですが、ヒール高さプラスパンチのダイへの入り込み量が、ノックアウトの可動量となるため、曲げ高さが低いときに有効な方法です。
【図3】は、リフターピンを利用した先下げの方法です。順送り加工では、曲げ高さ以上に材料を持ち上げておく必要があります。その高さをノックアウトの先下げに利用したものです。
【図3】(a)はリフターで材料を持ち上げているときの状態です。
上型が下降してストリッパが材料を下げると、ノックアウトも押し下げられて行きます(【図3】(b))。【図2】(b)と比較して、ノックアウトの下げ量が小さくなっていることが分かります。
【図3】(c)は、ストリッパの戻りに併せてノックアウトが上昇し、干渉することなく、ダイから曲げ後の製品を外した状態を示しています。