水による鋼の腐食は、水に溶けている溶存酸素によって進みます。しかし、大気から供給されるその濃度は、常温で8〜10ppmと非常に低いので、水中を拡散してくる溶存酸素の鋼表面への供給が腐食の速さを決めています。
鋼の表面に付着物が存在しなければ、溶存酸素濃度と拡散速度から、静止した淡水中での鋼の腐食速度は均一に進むと仮定して、0.4mm/年程度といわれています。実際にはさびができて酸素の供給を妨げるので、0.1mm/年程度であろうといわれています。
山地が多く急峻な流れの多い日本の表流水での例は少ないのですが、欧米では平坦な国土を降雨がゆっくり流れ、土や岩石からカルシウムが溶け、水の硬度が高くなり、いわゆる硬水になります。
このような水に鋼の表面が接すると、炭酸カルシウムの皮膜ができて、溶存酸素の供給を妨げ、腐食速度は非常に小さくなるといわれています。
我が国の腐食に対する水質の影響としては、pHは5〜9の範囲であまり影響を与えず、塩素イオンや硫酸イオンの濃度も、静止した状態ではほとんど影響しないといいます。これは、溶存酸素の供給が腐食速度を決めていることにほかなりせん。
流速がある場合、流速が増すにつれて溶存酸素の供給が増すので、腐食速度は大きくなりますが、流速がある程度以上になると、酸素の供給量が非常に多くなり、鋼の溶解に使いきれなくなって不動態化皮膜が生じ、これによって腐食速度は低下します。これは、水温が低下して溶存酸素濃度が上昇したでも起こります。
淡水中の塩素イオンや硫酸イオン濃度が鋼の腐食に与える影響は、不動態化が起こるための限定的な流速の状態や、不動態化が生じてからの腐食速度は、これらの濃度が高いほど大きくなります。海水のように塩素イオン濃度の高い水中では、いくら流速を増しても、不動態化は起こりません。
一般に、塩素イオンは腐食促進物質と知られていますが、炭素鋼の場合、水に浸っているときは、限界流速以上のときだけ大きな悪影響を与えます。
水中での鋼の腐食は、温度が高くなるにつれて約80℃までは増大し、それより高くなると低下します。これは、温度が高いほど酸素の拡散が速くなる一方、酸素の溶解度が減るという、腐食速度に対する相反する2つの作用の結果であります。
ステンレス鋼やアルミニウムは、淡水中では原則的には腐食せず、塩素イオンが存在するときの孔食やすき間腐食が問題になります。
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