金属の大気中での腐食は、金属の表面に付着する水と、空気中の酸素によって起きます。この場合、水中での腐食と違って、酸素が十分にあるのに対して、水の供給が限られるという特徴があります。大気中での金属表面への水の供給は、降雨、空気中の湿分の結露によって行われます。
空気中の湿分の凝縮は、目に見えるような水の層を作らないことが多いのですが、腐食の進行に重要な役割を担っています。屋外では降雨もありますが、屋内の腐食における水の供給は、ほとんど空気中の湿分の凝縮によることが多いのです。
通常、空気中の湿分は相対湿度で表わされます。これは、その温度において水が蒸発して空気中に飽和したときの水分濃度を100%とし、相対湿度は、ある温度における空気中の水分が飽和濃度の何%に当たるかを示しめします。
したがって理論的には、相対湿度が100%にならない限り、金属表面へ水は凝結しないことになります。相対湿度がある程度高いとき温度が下がれば、水分の飽和値が小さくなるので、凝縮が起こります。ところが実際には、温度が下がらなくても水分の凝縮が起きるのです。それは、次の2つの理由によります。
(1) | 金属表面に付着したごみやダストによって、微細なすき間や毛細管ができることによります。 相対湿度100%という定義は、水平な表面をもつ水面から水分が供給されることを前提にしていますので、これが凹面であると、もっと低い濃度の水分しか与えることができません。この場合、マクロ的にみて、相対湿度100%に満たない水分でこの面が飽和することになり、水分の凝縮が起こることがあります。 金属表面とごみやダストとの接触面には、凹面に相当するすき間があり、ダストやさびのような多孔質のものには無数の毛細管があると考えられます。磨いた鋼板上にダストがつくと、そこから錆びてくるのはそのためです。 |
(2) | もう一つの理由は、表面に塩類が付着するためです。食卓塩が空気中の湿分によって湿ってくるように、塩類は水を呼びます。 塩類が水を呼ぶといっても、それには最低湿度の条件があります。水をよぶ最低湿度は塩類によって違いますが、食塩は78%以上、乾燥剤に使われる塩化カルシウムは35%以上の湿度が必要です。 水分がある状態の鋼鈑上に、空気があれば腐食します。また、空気中に大気汚染の亜硫酸ガスや海からの塩分があれば、亜硫酸ガスは表面で硫酸が生成され、腐食は更に加速されます。 雨があたると腐食は進行する方向にありますが、腐食を促進する成分である硫酸や塩類を洗い流して防食的な働きもする効果もあります。海岸近くの腐食の激しいところでは、鋼鈑の表面よりも裏面の腐食が激しいという事例もあります。 |
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