その他の金属への電気めっき | 技術情報

　いままで解説してきたもの以外の金属へのめっきの特徴と注意点を種類別に解説します。

金属	特徴と注意点
亜鉛合金	亜鉛ダイキャストとして用いられています。精密鋳造が可能なことから複雑形状の部品に利用されます。特に近年、金型技術の進歩によって精密で微細な肉薄ダイキャストが可能になり、電子部品や通信器部品に利用されています。プラスチックとの競争では、金属であることが電磁波シールドにおいて強みを発揮しています。　めっきにおける注意点は、予備洗浄（溶剤洗浄、エマルジョン洗浄）で汚れを殆ど除去することと、ストライクめっきをシアン浴で行うことことであります。
マグネシウム合金	アルミニウムやプラスチックに代わる超軽量素材で、比重は1.8でアルミニウムの2/3であります。モバイルITとして脚光を浴びている携帯電話やノートパソコンの筐体、またリサイクルが簡単ということで、家電製品やAV機器にも採用されつつあります。軽量・リサイクル・電磁波シールドなどに特徴があり今後も増える素材であります。　めっきの注意点としては、おおむねアルミニウムと同様でありますが、マグネシウムはアルミニウムより活性が強いため、活性化や亜鉛置換には特殊なものが使われます。ストライクめっきも必要であります。しかし実際にはダイキャスト製品が多いため、ピンホールの多いめっきとなり、耐食性はあまり期待できません。クロメート処理のような化成処理の後、塗装されるものが多いようです。
フェライト	磁気ネックレス、エレキバン、電子部品としてマグネットフェライトが使われています。これらにめっきするときの注意点は、表面粗さを滑らかにすること、特殊な前処理の後に無電解ニッケルめっきを施してから、電気めっきを行うことです。
ステンレス鋼	ステンレス鋼の表面は不働態の膜で覆われています。めっきするときはこの膜を除去することが必要です。そのために活性化処理として浸漬処理または電解処理を塩化ニッケル浴中で行いますので、そのときニッケルめっきが行なわれます。ついで電気めっきを行います。
モリブデン	ハンダ付け性を改善するためにめっきが必要とされますが、一般のめっき方法では十分な密着力をもっためっきは得られません。
ベリリウム	軽量・高強度で、アルミニウムをしのぐ素材で、機能部品にはチタンなどと共に使われています。マグネシウムと同様に極めて活性の強い金属であるため前処理が困難です。特殊な処理法でやれば良好な密着性が得られるという情報もありますが、むずかしいめっきです。
チタン	表面が強固な不働態化皮膜で覆われていますので、高い耐食性を示します。電導性付与のため、また装飾性を高めるためにめっきすることがありますが、特殊な前処理工程が必要です。
焼結合金	鉄粉末や銅粉末の焼結合金が多用されていますが、なにぶんにも製品自体が多孔質であることが特徴であり、潤滑油保持に有効でありますが、めっきにとっては大変な難問です。穴中に侵入した処理液をどのようにして除去するかが決め手です。用途によっては、含浸処理によって穴を塞いだ焼結製品もありますが、これは前者よりは容易です。