絞り加工では、金型の摩耗で時間とともにキズが少しずつ成長するのは自然な姿です。しかし、自然とはいえないキズもあります。そのような内容について解説します。
【図1】はたてキズです。絞りキズの代表的なものです。絞り加工時はダイと材料の間に加工油の油膜があり、材料とダイが直接接しないようになっています。この状態が破られると金属どうしが接することになり、ダイ面にかじりが発生します。これが、キズを発生させる原因です。かじりができると、どんどん成長します。キズはかじりの成長に比例して大きくなります。
かじりが発生する要因としては、『加工油が少ない。加工油が絞り加工の面圧に耐えられずに破れてしまう』などの油が原因するものと、『ダイ面が粗くきれいな油面が作れないことからくることが要因のもの。ダイ材質の対摩耗性が低い、およびダイ形状(Rが小さい、形が悪い)が要因のもの』などがあげられます。外部から異物(砂埃など)が入り込んで発生させることもあります。
【図2】は打こんキズです。小さい点々キズがたくさんできるものです。このようなキズが発生するときには、たいてい、絞り加工している金型に金属の粉がたくさん見られることが多いです。これが打こんの原因となっています。多くの場合、ブランク加工のときの抜きバリが絞り加工をすることで、脱落してキズを作ります。または、ダイRが小さい等の原因で、材料の表面が剥離して金属の粉を発生させることもあります。
【図3】は肌荒れです。絞り加工のときに材料の移動がうまくいかないで、材料が伸ばされ表面が肌荒れするものです。このような状態のときには、表面の状態ばかりでなく、絞り径もマイナスしていることが多いです。原因としては、ダイのRが小さい。ダイの面が粗い。絞り速度が速すぎるなども考えららます。