ノックピンは、ダウエルピン、だぼピンなどとも呼ばれます。金型部品の位置決めに使います。
【図1】に示すような、ストレートタイプとテーパータイプがあります。
それぞれにはタップ付きのタイプもあります。JISでは金型用ダウエルピン(B5062、ストレートタイプのみ)と呼ばれます。JISには別に、機械要素として平行ピン(B1354)、テーパーピン(B1352)がありますが、型用より精度が劣ります。
ノックピンは、径の精度と面粗さ及び素材の硬さが必要要件となります。
ノックピンは、穴に軽く圧入して使用します。保持力はピンを穴に圧入したときに、弾性変形によって得られる面圧と摩擦によって作られます。したがってノックピンの使用に当たっては、ノックピンの径精度と穴精度の関係が重要です。
ピン径に対して穴は圧入するために、わずかに小さくなりますが、なま材と焼き入れ材では穴径を変えないと、保持力やピンの打ち込み力に差がでます。なま材では10μm、焼き入れ材では5μm程度を目安として、径を小さくします。
ノックピンの基本的な使い方は、【図2】に示すように、プレートにノックピンを2本打ち込み、位置ずれが起きないようにします。位置はできるだけ遠い位置とすることが、精度を高めるためにはよいことです。
【図3】はピンと穴の関係を示しています。
穴径と深さの関係は、ピン保持部の長さは径の2倍程度がよく、最小は径と同じ長さ、最大は径の3倍程度が目安となります。穴の深さがピン径より浅いと位置決め精度が悪くなり、深さが径の3倍以上になると精度を保っての穴加工が難しくなります。
ノックピンは【図4】(a)に示すように2部品を位置決めする使い方が本来の姿です。しかし、【図4】(b)に示すように、3枚のプレートに通して使うこともありますが、中間のプレートの穴はバカ穴として逃がします。ノックピンの中間が保持されない形となるために、位置決め精度は劣ります。したがって、4枚以上のプレートへノックピンを通すことは、精度上避けるべきです。
普通、ノックピンの使い方としては、ストレートタイプが多いのですが、テーパタイプも使われます。テーパタイプは、振動や衝撃によって緩んでしまう危険があるので注意が必要です。
また、側面からかかる圧力をノックピンで受けるような使い方は、ノックピン本来の使い方ではなく、十分目的を果たすことはできないと考えた方がよいです。
ノックピンの径の決め方は、併せて使用している締結ねじのサイズを参考にします。ねじのサイズと同じ径にするか、1サイズ上の大きい径を使用するのが一般的です。