ダイやパンチの凹の角部にRの無い角を作りたいと考えたとき、どこまで可能なのか。どのような手段で実現できるのか。効率よく作ることができるのか。コストは。といった問題をクリアすることが必要です。
パンチやダイは金型の重要部品です。通常は焼き入れされていますから、加工は研削か放電加工またはワイヤーカット放電加工が想定されます。
研削は成形研削とプロファイル研削及びジググラインダが考えられます。
研削加工の場合は砥石の形状が転写されますから、砥石がいかにシャープな角が作れるかと、加工に伴う砥石の欠落による丸みの拡大です。砥石の欠落を少なくしようとすると、粒度が小さく硬い砥石を使うことになります。硬い砥石は削り量を少なくする必要があり、加工効率は落ちます。
一般的な研削加工で、角(かど)を意識して加工して作れる凹部のコーナーRはR0.1mm程度でしょうか。がんばってR0.05mm、無理してR0.03mmのイメージがあります。これは成形研削でもプロファイル研削でも、それほど変わりは無いと思います。プロファル研削の方が有利とは思いますが。余談ですが、成形研削で小さいRを作れる人は、ずいぶん少なくなっていると思います。
放電加工は電極を使いますが、凹の角に対応する電極は凸になるので角はでます。放電による摩耗がコーナーRとなります。
ワイヤーカット放電加工ではワイヤーの線径が効いてきます。多く使われている線径は直径0.2mmです。半径0.1mmに放電ギャップがついてコーナーRの大きさが決まります。線径は直径0.1mm、直径0.05mmまであります。直径0.05mmを使えば半径は0.03mm程度が可能となります。放電加工についてもほぼ同様と思います。
ワイヤーカット放電加工は、電極線径が細くなれば断線の危険が高まるので加工速度は遅くなります。放電加工でも電極を交換して加工していくことになりますから、加工時間は掛かるようになります。
条件の違いはありますが、我々が特別な設備を使わずに扱うことのできる最小コーナーRは0.03mm程度にありそうです。いくつかある加工手段から何を選ぶかと考えれば、時間が掛かってもプログラムで加工ができる、ワイヤーカット放電加工に魅力を感じます。