切削加工:基礎知識(エンドミルの特長)
- [2024/8/2公開] Question 切込み深さが小さいときにびびってしまいます エンドミルの側面加工で、軸方向の切込み深さが大きいときは問題無いのですが、小さいときにびびってしまいます。切込み深さが小さい方が切削抵抗が小さいと思うのですがなぜですか? Answer びびりが発生するのはエンドミルの先端が振れていることが考えられますが、軸方向の切込み深さを小さくするとびびるのは、加工物に接している刃数が変動し径方向の力が断続的になっていることも考えられます。 【軸方向切込み深さが小さく振動が大きくなる状態】 図1では軸方向の切込み深さが小さく、1枚目の外周刃が切り上がったときに、2枚目の外周刃はまだ加工物に接していません。加工物と断続的に接するので、エンドミルにかかる径方向の力も断続的で、変動が大きくなります。振動が大きくなるとびびりなどが発生し、加工面の面粗度が悪くなり工具寿命が短くなります。 図1
- [2024/6/12公開] Question エンドミルとは何ですか エンドミルとは何ですか。ドリルやリーマとの違いは何ですか。 Answer エンドミルとは、マシニングセンタやフライス盤などの工作機械に取り付け、回転させて金属や硬質樹脂などをさまざまな形状に加工する切削工具です。 エンドミルは外周と端面に切れ刃がありさまざまな方向に加工を進めることができるので、平面・側面・曲面・傾斜面など多様な形状の加工が可能です。エンドミルの名前の由縁は、工具の端面(エンド)でも細断加工(ミル)ができるということからきています。 エンドミルに類似した切削工具にドリルがありますが、ドリルは先端にしか刃が無いため穴加工しかできません。またリーマは外周だけにしか刃が無いため、穴を仕上げる加工しかできません。 エンドミルの基本構造・分類・選定方法・使い方を以下に記載していますのでご参照ください。 (1)基本構造 エンドミルは底刃、外周刃、シャンク(柄)からなります。刃とシャンクのつなぎ部分で刃径より細い部位をネックと呼びます。タグ:
- [2024/6/12公開] Question 不等リード 不等分割のメリットを教えて エンドミルで、不等リードや不等分割というのがありますが、どのようなエンドミルでメリットはなんですか? Answer 不等リード・不等分割とは、刃のリード角(ねじれ角)と刃の分割配置を不等にして、防振効果を高めたエンドミルです。刃を不等リード・不等分割にすることで、加工時の振動の位相をずらし再生効果で大きくなろうとする振動を抑え、ビビリ振動を抑制させる効果があります。幅広い加工条件、被削材でビビリ振動を抑えられるので、不等リード・不等分割は効率的に面粗度の良い加工ができるといえます。 【不等リード】 同一エンドミルの各切れ刃のねじれ角度を変化させることにより、振動の位相をずらしビビリ振動の抑制が期待できます。
- [2024/6/12公開] Question 加工の幅が広がるようなボールエンドミルを教えて 汎用的なボールエンドミルだと加工が困難だったり効率的でなかったりする場合があります。特定の加工用など、加工の幅が広がるようなボールエンドミルがあれば教えて Answer 汎用的なボールやロングネック以外に、知っていると加工の幅が広がるようなボールエンドミルを紹介します 例えば穴出口のバリ取りや首下部が干渉するオーバーハング形状などは、汎用のボールエンドミルでは加工困難です。その場合、球形ボールではアプローチできることがあります。このように知っていると加工の幅が広がるボールエンドミルを、以下に記載しますのでご参照ください。 (1) 球形ボール 特長:広い刃角度幅のロングネックボールエンドミルです 用途:深くアプローチが困難な曲面加工タグ:
- [2024/6/12公開] Question 加工の幅が広がるようなエンドミルを教えて 汎用的なスクエアエンドミルだと加工が困難だったり効率的でなかったりする場合があります。特定の加工用など、加工の幅が広がるようなエンドミルがあれば教えて Answer 汎用的なスクエアやロングネック以外に、知っていると加工の幅が広がるようなスクエアとラジアスエンドミルを紹介します 例えば標準的なスクエアエンドミルの刃長は刃径の3倍程度ですが、エクストラロングは刃径の5倍の刃長のため深い立壁加工も可能です。このように知っていると加工の幅が広がるようなスクエアとラジアスエンドミルを、以下に記載しますのでご参照ください。 (1) エクストラロング 特長:標準の刃長は径の3倍に対して、エクストラロングは径に対して5倍の刃長です 用途:深い側面加工タグ:
- [2024/6/12公開] Question テーパネックエンドミルの有用性を教えてください ネックをわざわざ細くしているロングネックのエンドミルで、シャンク側を太くしているテーパネックエンドミルがありますが、加工物と干渉して邪魔かと思うのですが、何に使うのですか? Answer 金型などのポケット加工ではロングネックのエンドミルを使用しますが、テーパネックはネックを干渉せずに高品質、高効率の加工ができます ロングネックエンドミルは、深いポケットの金型加工で多く使われます。 金型には抜き勾配が0.5~3°程度、特に1°から2°の抜き勾配が多く設定されています。ですので金型加工ではネックがテーパ状のテーパネックエンドミルが、加工物に干渉せず適応できることが多くあります。 エンドミルのたわみ量は径の影響が非常に大きく、テーパネックはストレートネックに比べ高剛性なので、ビビリが減少し早送りや高品質の加工が可能となります。
- [2024/05/02公開] Question 自由指定直刃エンドミルで、見た目が同じエンドミルの違いを教えて 自由指定超硬直刃スクエアエンドミルで、見た目が同じSEMやBSC、SRMなどがありますが、何が違うのか教えてもらえますか? Answer SEM、BSC、SRMは全てスクエア形状のエンドミルですが、刃の付け方がそれぞれ違い、適した加工が異なります。 SEMは側面・溝加工用で、BSCはボス穴加工用、SRMはバックテーパ付のスクエアエンドミルです。同じスクエア形状ですが、刃の付け方がそれぞれ異なりますので適した加工用途が異なります。スクエア形状を例に類似品の違いと、その他お問い合わせが多い用語などの説明を以下に記載していますのでご参照ください。 【類似形状品の違い】 (1) SEMとLS-SEMの違い SEMは標準のスクエアエンドミルで、LS-SEMはロングシャンクで全長が長くなっています ロングシャンクの主な用途はポケット加工などの深い位置での加工用となりますタグ:
- [2024/05/02公開] Question 自由指定直刃エンドミル テーパエンドミルで寸法の指定方法を教えて 自由指定超硬直刃エンドミル テーパエンドミルで寸法指定をしても、エラーがでて型番の確定ができません。どのように寸法指定すればいいか教えてもらえますか? Answer 自由指定直刃エンドミル テーパエンドミルの寸法指定は、他の寸法により指定できる範囲が変動しますのでそこに注意し指定値を調整します 強度などによる固定された寸法範囲の他に、形状が成り立たないため指定できる寸法に制約がある場合があります。これは他の寸法により指定できる範囲が変動するので、変動する理由を理解して指定値を調整すると型番の確定が早くできます。問い合わせが多い寸法の指定範囲が変動する主な制約条件を以下に記載していますのでご参照ください。 【テーパエンドミルの主な指定寸法制約】 (1)テーパエンドミルで指定できる刃長ℓの制約は以下の3点になりますタグ:
- [2024/05/02公開] Question 自由指定直刃エンドミル Tスロットカッターで寸法指定ができない場合を教えて 自由指定超硬直刃エンドミル Tスロットカッターでカタログに記載されている値の範囲内なのに寸法指定ができませんでした。どのような場合に寸法指定ができないのか教えてもらえますか? Answer 自由指定直刃エンドミル Tスロットカッターには、製作できる寸法範囲が固定されている値の他に、他の寸法により製作できる範囲が変動する寸法があります 例えば刃径より首径は2mm以上細くないと製作できないのですが、刃径の指定寸法により首径を指定できる範囲が変動します。問い合わせが多い寸法の指定範囲が変動する主な制約条件を、以下に記載していますのでご参照ください。 【Tスロットカッターの主な指定寸法制約】 (1)刃径Dと首径d1の差は2mm以上にします(=刃と首の段差は1mm以上)タグ:
- [2023/12/8公開] Question 刃先交換式エンドミルの有効刃数とはなんでしょうか? Answer 刃先交換式エンドミルの有効刃数とは、ソリッドエンドミルの刃数に相当します。チップの配置により有効刃数が異なる場合があるので、切削条件の送り速度に注意します。 2枚刃のソリッドエンドミルは、1回転あたりの被削材を削る回数は2回となります。 下図の刃先交換式エンドミルにはチップは4か所付いていて2列に配置されています。しかし側刃の配置は交互にあるので、1回転あたり被削材を削る回数は1回となります。実質の刃数は1枚刃と同等ですので、有効刃数は1枚となります。
- [2023/11/28公開] Question ラフィングエンドミルのメリットを教えて ラフィングエンドミルを検討していますが、メリットと使用上の注意点を教えてもらえますか? Answer ラフィングエンドミルは外周刃が波状で、スクエアエンドミルに比べ切込み量や送り速度を上げることができます。 ラフィングエンドミルは外周刃が波状で、粗ピッチの場合切削抵抗が2~3割下がります。そのため切込み量や送り速度を上げることができます。 スクエアエンドミルでの一般鋼の側面加工では、径方向の切込み量は刃径の0.1~0.2倍以下が推奨値ですが、ラフィングエンドミルでは刃径の0.3~0.4倍以下が推奨値です。 また切りくずが分断されるので、切りくず排出性に優れています。但し被削材の加工面に筋ができてしまうので、面粗度が必要な仕上げには適していません。 面粗度が必要のない逃がし加工や、仕上げ加工前の粗加工で使用すると、加工時間の短縮になります。
- [2023/11/28公開] Question ミスミのエンドミルのコーティングに関して教えて ミスミで使われるエンドミルのコーティングの種類について、用途や特長を教えてもらえますか?
- [2023/11/28公開] Question 超硬エンドミル加工での送り速度と切込み量について教えて 超硬エンドミル加工で加工時間の改善のため、切削条件を見直そうとしています。送り速度は回転速度と1刃送りから算出するのは分かるのですが、肝心の1刃送りが分かりません。また切込み量の目安も教えてください。 Answer 基本はエンドミルの切削条件表から見て加工することをおすすめいたしますが、実加工に合わせ改善する場合、1刃送りと切込み量の調整範囲目安を記載しますのでご参照ください。 (1)1刃送りと送り速度 (a)1刃送りの目安 30°ねじれ、レギュラー刃長、2枚刃のミスミ超硬エンドミルで機械構造用炭素鋼を側面加工する場合、以下表の中央値で試し加工をおすすめいたします。
- [2023/11/28公開] Question エンドミルを選定したい エンドミルはたくさん種類がありますが、どのように選定するのか教えてほしいです。 Answer 加工用途と被削材、加工制約による刃寸法と外形状寸法から選定します。また、効率的な加工を行うために、刃数・ねじれ角・コーナー形状を選びます。 エンドミル選定に必要な仕様と選定内容を、以下に記載していますのでご参照ください。 エンドミル選定に必要な仕様と選定内容 ①加工用途の選択:加工形状に応じて選択します。
- [2023/11/28公開] Question エンドミルの母材と特徴 使い分けを教えて エンドミルの母材はさまざまな種類があるようですが、特徴や使い分けを教えてもらえますか? Answer エンドミル母材の種類と特徴、主な被削材を以下に記載しますので、加工用途に合った母材を選定してください。
- [2023/11/28公開] Question エンドミルでの高速ミーリングのメリットを教えて 切削条件で標準条件と高速条件がありますが、なぜ分けているのでしょうか?切り屑排出量を計算すると標準条件のほうが多いようでした。加工時間が遅い高速条件にはどういったメリットがあるのか教えてもらえますか? Answer エンドミルでの高速ミーリングは、工具の長寿命化と高精度加工によるトータル工数低減のメリットがあります エンドミルでの高速ミーリングとは、高硬度鋼材などにおいて切込み量と送り量を抑制し高速の回転速度で加工することで、高精度かつ工具寿命特性を高めた切削技術です。高速の回転速度で切込み量を少なくすると、刃先熱と刃先の切削負荷が低減し、エンドミルの寿命が延びます。また、高硬度鋼における高精度かつ高能率切削の実現で、例えば、金型の磨き作業を大幅に短縮できるなどのトータル工数の低減効果が期待できます。
- [2023/7/3公開] Question 直刃エンドミルとは何ですか?メリットや用途を教えてください。 エンドミル選定相談時に直刃なら対応可能と言われたことがあります。 直刃エンドミルとは何ですか?どのようなメリット・デメリットがありますか? Answer ねじれのない(ねじれ角=0°)エンドミルを直刃エンドミルと呼びます。 下図のように側刃にねじれ角を持たないエンドミルを直刃エンドミルと呼びます。 直刃のメリット・デメリット(ねじれ刃と比較) 直刃エンドミルはねじれ角を有するエンドミルと比較すると以下のメリット・デメリットがあります。
- Question 超硬ボールエンドミルを再研磨に出す時の最適な摩耗状況を教えてほしい 社内規定で一定加工時間にて再研磨に出しているが、個人的にはまだ使える気がしている。また、R部の摩耗や欠けが大きいと想定より研磨代が高く、研磨不可などが発生している。 再研磨に出す最適な摩耗状況がわかる基準があれば知りたい。 Answer 超硬ボールエンドミルの再研磨に出す最適な摩耗状況 下記の3つのポイントを参考に、再研磨に出すタイミングを検討してみてください。 摩耗幅は0.4~0.8mmであれば切断せずR部のみの研磨で対応可能(図1-1) 摩耗幅が0.2mm未満であれば再研磨は対応可だが、中仕上加工レベルならそのまま使用可能(図1-2) 欠け含め先端摩耗が1mm以上になる場合は切断が発生しコスト増(図1-3) 切断後にR研磨を再現する十分な刃長が取れない場合は再研磨不可(図2) 図1 刃の摩耗の正面図タグ:
- [2022/02/20公開] Question エンドミルに中ベコとフラットという説明の記載がありますが、どういう意味ですか? スクエアエンドミルや自由指定直刃エンドミルには中ベコやフラットというものがありますが、どういう違いでしょうか。 また、どのように使い分けをするのですか? Answer 中ベコ・フラットとは、底刃の形状のことです 底刃の形状の違いを表しており、用途によって使い分けます。 それぞれの特徴や使い分けのポイントは、以下の通りです。 スクエアエンドミルの中ベコとは 中ベコとは、すかし角と呼ばれる底刃を中心に向けて1~3°程度へこませて、逃がしている形状のことです。 切りくずの排出性をよくし、また切削抵抗も少ないので、特に記述がない限り一般的なエンドミルは、中ベコ形状になっています。 図1.底刃が中ベコのスクエアエンドミル
- Question ねじれ角の違うエンドミルをどのように使い分ければよいか? エンドミルのねじれ角は30°・45°・50°と種類がたくさんありますが、どのように使い分ければよいでしょうか? Answer ねじれ角の効果 エンドミルのねじれ角が大きくなると、ワークと切れ刃の接触長が長くなり、単位長さ当たりの切れ刃にかかる負荷が減少するため、工具寿命に有利になります。反面、切削抵抗は大きくなるため、保持剛性の高いホルダの適用など配慮が必要です。